TOUR

梵寿綱のユートピア☆ケンチク

2017.10.29
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日時:2017年10月29日(日)9:30~13:00

見学場所:賢者の石、輝く器、ラポルタ和泉、マインド和亜、ドラード和世陀

参加者:15名

ナビゲーター:和田菜穂子

 

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台風接近に伴う生憎の天気の中、見る人を魅了し続ける梵寿綱氏の建築を巡るツアーが行われました。

まずは待ち合わせ場所で4名1組のグループに分けられました。

 

最初に向かったのは1979年竣工の「賢者の石(ルボワ平喜)」。建物の姿が見え始めた瞬間、表面を彩る彫刻にあっという間に引き込まれ、早速カメラを構える姿が見受けられました。その様子から、普段と異なる何かの始まりを予感させます。「賢者の石」は店舗兼集合住宅。全員がエントランスホールに集まった後、ナビゲーターの和田先生から今回の主人公梵寿綱氏の経歴に関する解説が行われました。目にしている彫刻は共用部分を中心に施されていて、梵氏だけではなくアーティストとのコラボレーションによって生み出されているとの事。そして、その制作にあたってはアーティストに細かい指示は出さず、相手を信頼して任せており、それはアントニオ・ガウディがかつて職人達に細かく指示を出していたのと異なります。これによって、アーティスト達は簡単には壊されない建物に自分の作品をずっと残す事ができる、等の話が語られ、全員で梵氏と建物に対する理解を深めていきました。ここではグループに分かれて4択クイズも行われました。解説後は撮影タイム。皆様、思い思いに空間の写真を撮っていきます。

 

「賢者の石」を出てから向かったのは、すぐ近くの「ヴィッセル・輝く器」。ここではファサードのデザインを堪能しました。

 

その後は電車を乗り継いで1989年竣工の「ラポルタ和泉」へ。この集合住宅は何よりも入口の上の大きな女性像が眼を惹きます。女性像がある大きな吹き抜け空間はこの集合住宅のシンボルとなっています。

 

そこから徒歩圏にある、1992年竣工の集合住宅「マインド和亜」は、1階から最上階を貫く中庭空間が特徴で、海をコンセプトに造られた空間や外壁を彩る彫刻たちは一つ一つが個性的です。アーティスト同士のコラボレーションがそれまで見てきたものよりも、洗練された雰囲気に仕上がっていました。グループ毎に分かれて外観を見学しましたが、建物の裏側であってもきちんと造り込まれているその創造性には頭が下がる思いでした。

 

最後は早稲田大学近くの「ドラード和世陀」(1984年竣工)へ。ここで梵寿綱氏本人が登場し、直接お話を伺う事ができました。1934年生まれの御歳83歳の梵氏ですが、そうとは思わせない饒舌な語りでこれまでの事を聞かせて下さいました。

 

戦中戦後と生きてきて人の死を沢山見てきた。その経験から自分が生きている意味を考えさせられた。時代を沸かせた近代建築からは感動が生まれない。その感動を呼び起こす物を建物で造れば、それは色々な人に刺激を与え、また職人・アーティスト達にも時代の流れで失われていった活躍の場を与える事ができるのではないか。

 

そんな、ドラード和世陀から始まったアーティストとのコラボ活動についてご本人から伺う生の話に、全員がとても引き込まれていきました。

 

様々な建物を見学する東京建築アクセスポイントであっても、設計者本人からお話を伺える機会はそうありません。

それが今回叶った事で生の言葉を聞く良さを実感しました。ましてや豊富な経験と独創的な世界を造り出している梵寿綱氏より伺うからこそ響いてくる深い話もあり、天気は悪天候でも全くそれを感じさせない濃厚な時間を過ごす事が出来たツアーとなりました。

 

 

レポート:阿久根 直子(学生インターン)

桑沢デザイン研究所 デザイン専攻科1年