TOUR

【AP会員限定ツアー】ヤマトインターナショナル

2025.07.31
https://accesspoint.jp/reports/yamato/

日時:2025年7月31日(木) 13:30~15:30

見学場所:《ヤマトインターナショナル》(原広司、1986)

参加者:15名

ナビゲーター:磯達雄、和田菜穂子

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アパレル企業《ヤマトインターナショナル》の東京本社ビル見学会を開催しました。本建築は、故・原広司氏によって設計され、DOCOMOMO(日本におけるモダン・ムーブメントの建築)250選にも選出されています。磯先生のレクチャーを踏まえて建物の内部を見学するなかで、原氏の建築理論を感じとることができ、大変貴重な機会となりました。

 

原氏の建築理論に【有孔体】が挙げられます。生きた建築とは閉鎖空間ではなく、【孔(あな)】をもつ空間である――原氏はそう提唱しました。実際に、4階テラスからファサードを見上げると、12層のオーバーレイに空けられた多様な【孔】の存在感に圧倒されました。隣接するJSプログレビルからマクロの視点で本建築を眺める機会も特別に頂きました。本建築の奥行きの広がりを実感し、この美しく自由な架構体がトポロジーの考え方につながってくると思うと、原氏の設計思想の深さに改めて感銘を受けました。【孔】により、「ヒトのながれ」が生み出される。私たちもまた、本建築のながれの一部として、原氏の思想を身体で感じ取っていたのかもしれません。

 

【様相】の考え方も原氏の建築理論の一つです。本建築の内部には、窓ガラスや天井など、至るところに細くギザギザの装飾が施されていました。これらは【様相】の思想に基づいており、原寸大で原氏が模様を書き、それをもとに金属加工者が一点ずつ加工をしたとのことで、同じ模様はひとつもないそうです。装飾をひとつひとつ探しながらじっくり観察することが、内部見学をより豊かなものにしてくれました。見学会当日は晴天に恵まれ、青空にさまざまな形の雲が浮かんでいました。原氏は、雲の形が無限にあることを引き合いに出し、【様相】の思想を構想しています。食堂の窓からは、澄んだ空と多様な白い雲が望め、窓に張り巡らされた細い装飾と一体となり、まさに原氏の建築思想を象徴しているかのような光景でした。

 

このほかにも、本建築には原氏の建築理論が内在する箇所が多く見受けられ、充実した見学会となりました。今後は、田崎美術館や京都駅ビルなど、原氏の他の建築にも実際に訪れ、建築理論についてさらに学びを深めていきたいと思います。

 

レポート:西田圭吾(学生インターン)

慶應義塾大学2年