日時:2024年2月5日(月)
見学場所:山の上ホテル(1937年竣工、設計:ヴォーリズ建築事務所)
参加者:15名
企画:岸 佑
ゲストナビゲーター: 福永貴之(ヴォーリズ事務所)
2月13日をもって休館となる《山の上ホテル》(1937年竣工、設計:ヴォーリズ建築事務所)のお土産付きの見学ツアーを会員限定で行いました。休館の発表以来、ひっきりなしに人が訪れる中で、山の上ホテルの方にお願いをして実現した企画でした。
ホテル側のご厚意で、ホテルの大広間を集合場所としました。数々の作家や文化人が投宿したことで知られる山の上ホテル。休館イベントと題して、数々の文化人や作家の手紙などが館内に展示されていましたが、このツアーのために、それとは異なるものが大広間に用意されていました。この日のゲストツアーガイドは、ヴォーリズ建築事務所の福永さんです。福永さんは、2019年の改修に際して主にデザイン面を手掛けられました。ツアー当日の2月5日は雪の予報。ホテルのスタッフの案内で、外観の説明からはじまり、随所に福永さんからの説明が加わります。福永さんのほかにもヴォーリズ建築事務所から数名が見えられ、改修前後の写真や参考となった写真、階段の蹴上げ部分にあったオリジナルタイルの破片など、貴重なものを見せていただきながらのツアーとなりました。外観はアメリカで摩天楼を設計していた当時のヴォーリズ事務所所員、松ノ井覚治が手掛けた由緒正しいアール・デコであること、その後のホテル開業を経て、1980年には元大高事務所の阿井和男と構造家の渡辺邦夫によって、建物の「保存」を前提とした大規模な改修が行われたことなどが説明されます。その後は1階のベンチや図面について説明を受け、バーを見せてもらい、地下1階へ移動。階段の蹴上げ部分のタイルについての説明を受けたのち、廊下の歴史展示を見ながら、地下2階の葡萄酒ぐらモンカーヴを見学させてもらいました。地下2階のモンカーヴもこの数年はずっと閉じられたままになっていた場所で、最後の見学機会になったと思います。大広間に戻ってちょっと休憩したのち、5階へあがって階段を上から見学し、4階の客室を3つ見せていただきました。その後は、パーラーを通過してチャペルとガス燈を見学し、再び大広間に戻ってお土産を受け取り解散となりました。お土産には、その日の午前中には売り切れてしまうというスイーツをご用意いただきました。
SNSに掲載されている山の上ホテルの写真の多くは、2019年の改修で福永さんが竣工当時の写真などから再現したものが多く、今回のツアーはその意味でも貴重なツアーとなりました。また、1980年に阿井さんがいわれた「保存」は、今でいう「保存」の意味と異なるところが多いのですが、それでもヴォーリズと松ノ井さんの建物を次世代に継承しようとした先駆的な事例としてもっと早く注目し評価するべきだった、という思いを抱いたツアーでもありました。山の上ホテルが今後どうなるのかにも注目し続けたいと思います。
レポート:岸 佑