TOUR

【山手線ツアー】高田馬場ー目白

2020.12.27
https://accesspoint.jp/reports/yamanote-takadanobaba/

日時:2020年12月27日(日)9:30~12:00

見学場所:《BIG BOX高田馬場》(黒川紀章、1974年)、《慈友クリニック》(富永讓+フォルムシステム設計研究所、2000)、《オルト保育園》(ミケーレ・ジーニ、2010?)、《茶道会館》(淡々斎夫妻、1956)、《佐伯祐三アトリエ》(不詳、1921)、《薬王院》(不詳)、《下落合氷川神社》(不詳)、《落合中学校》(船越徹、1993)、《中村彝アトリエ》(不詳、1916)、《目白ヶ丘教会》(遠藤新、1950)、《日立目白クラブ》(宮内省内匠寮、1928)

参加者:8名

ナビゲーター:和田菜穂子

 

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山手線の高田馬場から目白を歩きました。集合場所の《BIG BOX高田馬場》は黒川紀章によって設計された商業ビルです。窓がほとんどない外観が特徴で、開口部の代わりに剥き出しの配管や、階段などの動線によって表情がつけられています。現在、正面の壁は青色に塗り替えられていますが、かつては赤色の姿で親しまれていたようです。

 

途中、コンクリートや曇りガラスなどの素材感を活かした《慈友クリニック》(富永讓+フォルムシステム設計研究所、2000)や、レッジョ・エミリア・アプローチというイタリアの教育方針を建築にも反映させた《オルト保育園》(ミケーレ・ジーニ、2010?)、下水処理施設の地上部を活かしたせせらぎの里公苑などに立ち寄りました。《聖母病院》はマックス・ヒンデル設計の旧館(1931)のデザインを踏襲し、アーチ窓など以前の面影を残しています。ヒンデルは戦前に上智大学やカトリック神田教会など多くのキリスト教施設を手がけた建築家です。

 

 

落合周辺は落ち着いた住宅街で、文化人ゆかりの建物が多く残っています。今回はまず、《佐伯祐三アトリエ》(不詳、1921)を見学しました。木造下見板張りのアトリエはコンパクトですが、奥の吹抜や大きな窓など採光に配慮された空間です。資料室も併設され、佐伯やその家族の生涯と作品について知ることができます。《薬王院》や《下落合氷川神社》といった地域に根付いた寺社や、モダンな外観の《落合中学校》(船越徹、1993)などを見学しながら、次に向かったのは《中村彝アトリエ》(不詳、1916)です。こちらも下見板張りの外壁や大きな採光窓などがあり、先に見学した佐伯祐三アトリエと共通する点ですが、こちらは外壁の木目が強調されていたり、煉瓦風の屋根だったりと外観の印象は少し違います。室内にはイーゼルや家具などが再現され、創作活動の様子を想像させます。

 

《目白ヶ丘教会》(遠藤新、1950)は遠藤の最晩年の作で、彼自身の葬儀も行われた場所です。大谷石が使用されたエントランス、幾何学的な模様が入った窓などは遠藤の師であるライトの作品とも通ずるものがあります。全体的にシンプルな建物ですが、鐘楼の内側には波のような模様があしらわれているなど、デザインにも工夫が凝らされています。《日立目白クラブ》(宮内省内匠寮、1928)は、学習院の寮として建てられましたが、現在は日立グループの厚生施設となっています。屋根には赤いスペイン瓦が使われ、スパニッシュスタイルで建てられていますが、白い外壁中央の階段状の部分などアールデコの要素も感じられました。

 

ツアーを終え、想像以上に歴史も建物もある街だということがわかり、アトリエ建築を比較して楽しむことができた、などの感想をいただきました。

 

レポート:山東真由子(学生インターン・慶應義塾大学4年)