日時:2022年3月8日(火)10:00~12:00
見学場所:《渋谷PARCO》(竹中工務店、2019)、《渋谷区役所》(日本設計、2018)、《北谷稲荷神社》(菊竹清訓、1997)、《国立代々木競技場》(丹下健三、1964)
参加者:7名
ナビゲーター:和田菜穂子
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ツアー後半は《渋谷PARCO》(竹中工務店、2019)からスタートしました。渋谷駅周辺のビルでは内部にパブリックスペースを設けるのが最近のトレンドのようで、この建物も屋上は公園となっています。特に興味深いのが、屋上から各階のテラスをつなぎスペイン坂広場まで降りる階段で、元から存在するスペイン坂という地形が意識されているようです。
続いて訪れた《渋谷区役所》(日本設計、2018)はタワー型の集合住宅と一体化した施設です。区役所部分の壁面は緑のグラデーション、住宅部分はピンク色と、機能や構内図の表記と壁の色を一致させる工夫がなされていました。
《北谷稲荷神社》(菊竹清訓、1997)はビル内に組み込まれた神社で、手水などの設備も現代的です。社殿や神職住宅など境内の建物を共通のうねった屋根でまとめています。左右が斜めに立ち上がった珍しい形の鳥居も菊竹の設計によるようです。この神社を目当てに関西から参加された方までいらっしゃり、屋根のうねりは久留米市庁舎や江戸東京博物館など晩年の菊竹作品とも共通しているという気づきを皆さんで共有しました。
《国立代々木競技場》(丹下健三、1964)はちょうど人気のないタイミングで、耐震改修を終えた姿を間近でじっくりと鑑賞することができました。第一体育館は2本、第二体育館は1本の柱でメインケーブルを吊り、メインケーブルからさらに鉄骨を吊ることで屋根を支えています。緊張感のある構造美は、構造設計を担当した坪井善勝の力量によるところも大きいようです。また、当時の最新技術を使ったモダンな建物でありながら、第一体育館の支柱からⅤ字に飛び出したコンクリートが神社の千木を連想させるなど日本の伝統建築を意識した部分も見られ、オリンピックという大舞台にふさわしい会場を作る上ではどちらも欠かせない要素だったのだろうと感じました。
東京2020オリンピックに向けて急速に再整備された渋谷の街を巡りましたが、参加者の方それぞれに目新しく感じられる部分と、懐かしく感じられる部分があったようです。知っているつもりの街でも、歩き回ることで新たな発見があったり、訪れる度に街が変化していたり、まだまだ面白さがありそうだと感じられるツアーでした。
レポート:山東真由子(学生インターン)
慶應義塾大学医学部5年