TOUR

【山手線ツアー】西日暮里ー日暮里

2021.04.11
https://accesspoint.jp/reports/yamanote-nishinippori/

日時:2021年4月11日(日)9:30~12:00

見学場所:《太平洋美術会研究所》(年代・設計者不詳)、《旧安田楠雄邸》(清水組、1919)、《旧島薗邸》(矢部又吉、1932)

参加者:20名

ナビゲーター:和田菜穂子

 

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通常は公開していない島薗邸が見学できることもあり、今回は特に多くの方が参加してくださいました。最初に見学したのは、《太平洋美術会研究所》(年代・設計者不詳)です。中村不折、中村彝、朝倉文夫、高村智恵子など名だたる画家、彫刻家たちが使用し、現在も美術講座などに使用されているアトリエを案内していただきました。現在の建物は彫刻家の日名子実三のアトリエを1957年にこの地に移築したものです。

 

続いて、富士見坂などいくつもの坂を上り下りし、実業家や芸術家などの邸宅が多いエリアに入りました。今回の1つ目の目玉、《旧安田楠雄邸》(清水組、1919)は豊島園の開園者藤田好三郎が建て、その後安田財閥の創始者の娘婿安田善四郎が購入したものです。当時は貴重だったガラスがふんだんに使用された応接間、表千家の名茶室を写した残月の間、格式高い書院造の二階の客間・次の間など、来客をもてなすために、それぞれ異なる表情を見せる部屋が用意されていました。また、アイランドキッチンの先駆けと言えるような台所には、棚などが昭和時代の改修のまま残されています。邸内は照明や襖の引手など細部の意匠にまで大工の技が光り、見どころが満載でした。

 

続く2つ目の目玉が、《旧島薗邸》(矢部又吉、1932)です。生化学者の島薗順雄が矢部又吉に依頼して建てた洋館です。二人ともドイツ留学の経験があり、内部のしつらえにはドイツ的な要素が散見されました。今回は特別にご親族の方に案内していただき、建物や家族の歴史を教えていただくことができました。特に注目が集まったのが、戦時中に増築された2階の部屋の一角です。世相を反映して飛行機が描かれたステンドグラス、暖炉のように置かれたガスストーブ、装飾的な柱などが置かれ、和室でいうところの床の間のような役割を果たしています。1階のダイニングではかつてドイツから持ち帰られた振り子時計やピアノなどの貴重な家具や、日本では珍しい留め具が使用された窓、パーゴラのある庭などを見せていただきました。こちらは来客を迎えることを重視した安田邸と比べ、家族が暮らすことに主眼を置いた住宅です。

 

今回のツアーでは二つの邸宅を巡りましたが、建てられた年代の違い、住まい手の違いなど対照しながら見学できるコースになっており、住宅史の勉強になりました。

 

レポート:山東真由子(学生インターン)

慶應義塾大学医学部5年