TOUR

つくばの建築

2021.12.19
https://accesspoint.jp/reports/tukuba/

日時:2021年12月19日(日)10:30~17:00

見学場所:《県営小野崎アパート》(内井昭蔵、1985年)、《洞峰公園体育館》(大高正人、1980年)、《洞峰公園温水プール》(大高正人)、《筑波新都市記念館》(大高正人、1976年)、《つくば研究支援センター》(日本設計、1988年)、《竹園西小学校》(原広司、1990年)、《つくば国際会議場》(坂倉建築研究所、1999年)、《つくばカピオ》(谷口吉生、1996年)、《つくば南3駐車場》(伊東豊雄、1999年)、《つくばセンタービル》(磯崎新、1983年)、《松見公園 展望塔・レストハウス》(菊竹清訓、1976年)

参加者:8名

ナビゲーター:磯達雄

 

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秋葉原駅からつくばエクスプレスに乗ること45分。あっという間につくば駅に到着し、ツアーがスタートしました。路線バスに乗ってまず向かった先は洞峰公園。とその前に、バスを下車してすぐに名建築を偶然発見しました。《県営小野崎アパート》(内井昭蔵、1985)です。斜めの屋根で統一感のある集合住宅でした。このようにつくばは、名建築の宝庫であり、歩いているだけで至る所に有名な建築家が設計した建物を発見することができます。元々つくばは都市ではなく、国策によって人工的に造られた学園都市です。雑木林を開拓し、1970年代から筑波大学の開学を皮切りに、1985年のつくば科学万博の開催等によって、多くの建築家たちが建物を建て始めました。それから50年近くが経ち、つくばセンタービルは建物の老朽化によるリニューアル工事が検討されたそうですが、市民団体「つくばセンター研究会」の活動などにより、つい先日エスカレーターを新たに設置するリニューアル案は白紙となり、既存の建物を活かす方向に決定したそうです。その市民団体の代表を務める冠木新市さん、つくばにある106個の建築を紹介した本「つくば建築フォトファイル」で写真を担当された齋藤さだむさんをツアーの後半からお迎えし、話を伺いながら建築を見て回りました。ちなみに磯先生は「つくば建築フォトファイル」の中で、大高正人と土肥博至の対談の司会を担当しています。

 

洞峰公園を散策しまず見学したのは《洞峰公園体育館》(大高正人、1980年)。市民の健康を守るための施設として建てられました。建物上部がガラス窓となっていますが、直射日光が当たらないように間接的に光を取り入れる仕組みにすることで隙間から体育館全体に光が行き届き、明るい空間となっていました。モダニストは普通屋根を嫌う傾向にありますが、大高氏はモダニストであるにも関わらずあえて切妻屋根を使用しています。福島県出身で土着的な建築を志向する大高らしい特徴と言えます。また、屋根に大量の太陽光パネルを配置させ、省エネルギー化を実現していました。これは設計当時からの構想のようで、当時では画期的なことだったと思います。次に隣にある《洞峰公園温水プール》(大高正人)を見に行きました。内部の改修工事中のためプール内に入ることはできませんでしたが、外を一周しました。このプールも大きな切妻屋根が特徴的でしたが、屋根の斜面が全面ガラス張りになっている点が体育館との違いでした。屋根全体から太陽光を取り入れ、温水プールにするためにその熱を利用する仕組みとなっていました。機能性とデザイン性を併せ持った建築でした。その後、公園内にある洞峰沼に突き出た建物の《筑波新都市記念館》(大高正人、1976年)へ行きました。こちらは当初は寄棟屋根を想定しいていた建物だそうです。ここは、つくばの都市を造った際につくばの魅力をプレゼンテーションした場所であり、今日も子ども連れの市民の方々が多く訪れていました。

 

つくばには一直線の長い遊歩道「つくば公園通り」が縦に通っており、その道沿いに建てられた建築の数々《つくば研究支援センター》(日本設計、1988年)、《竹園西小学校》(原広司、1990年)、《つくば国際会議場》(板倉建築研究所、1999年)、《つくばカピオ》(谷口吉生、1996年)、《つくば南3駐車場》(伊東豊雄、1999年)を歩きながら見て回りました。

 

そして歩くこと20分。つくば駅前に戻り向かった先は《つくばセンタービル》(磯崎新、1983年)。つくばセンタービルは、ホテルやコンサートホール、モール、広場などからなる複合施設です。まずは「ホテル日航つくば」にある日本食レストランにて昼食を取りました。釜飯のつく御膳は豪華で参加者みんな大満足。お腹を満たしてからは、ホテルの中を案内してもらいました。モンローカーブのガラスブロックやドアの取手、モンローチェアー(1972年に磯崎新によってデザインされた椅子。マッキントッシュの名作「ヒルハウス」のオマージュであり、背の造形にはマリリン・モンローのボディーラインを取り入れている。)など、磯崎新らしさの詰まったホテルでした。次にホテルの外に出て、「つくばセンター広場」を歩きました。ここは、ローマにあるカンピドリオ広場を模した設計として有名です。例えばカンピドリオ広場の場合、床が黒地に白の模様が入っているのに対し、この広場は白地に黒の模様が入っていて、白黒を反転させています。コンサートホールとして使用されている「ノバホール」にも行きました。磯崎新は、フランス革命期の建築家クロード・ニコラ・ルドゥーの設計した柱をノバホールに引用しており、直方体と円柱が交互に積まれたノコギリ状の柱が特徴的でした。アイアイモールはこの週末の2日間に限り、スケルトンになっている状態でトークイベント会場として一般公開されていました。内部を見ることができ、とても幸運でした。

 

ツアーの最後は、《松見公園 展望塔・レストハウス》(菊竹清訓、1976年)へ。高さ45メートルの展望塔で、筑波山から筑波研究学園都市に至る360度のパノラマを堪能することができました。私は今日が初めてのつくばでしたが、すっかりつくばの建築の虜となりました。これからも建築を守り続けてほしいと願っています。

 

レポート:舟山織沙(学生インターン)

慶應義塾大学2年