日時:2023年7月30日(日)9:30-13:30
見学場所:大学セミナーハウス
参加者:70名
トーク:磯達雄、山田新治郎
ツアー:磯達雄、若原一貴、和田菜穂子、岸佑
今回のツアーの舞台は八王子市にあるブルータリズム建築、大学セミナーハウスです。1960年代から70年代に多く建てられたブルータリズム建築は力強く荒々しいコンクリートの外観が特徴です。シンプルで大胆な構成は無骨にも見え醜い建築と呼ばれることもありましたが、近年再評価されています。『日本のブルータリズム建築』の出版を記念したトークイベントでは、磯達雄さんと山田新治郎さんにより書籍で取り上げられた建築について語られました。1時間半に及ぶ盛りだくさんの内容。その全てを書くことはできないので、中でも個人的に興味深く感じたところをまとめます。
安田臣設計のプラザ佐治は旧佐治村の中心に位置しています。田舎だからこそ村の最重要な場所として都市的な広場を作り人々が集まる場所を作ることの重要性に共感しました。広場が駐車場にされることが多いですが、プラザ佐治の場合は広場が保たれていました。しかし、広場改装により人々が自由に立ち入れない日本庭園に変化したという点はなぜだろうと疑問に思いました。仙田満設計の愛宕山少年自然の家では非効率な動線が多様な風景を生んでいると考えると、機能性を優先した画一的なモダニズム建築が必ずしも良いわけではないと感じました。特に学校などでは、動線が複雑な方が色々な遊びの創造性が増すようにも思いました。コンクリートの質感をより美しく見せるためにモノクロ写真を用いていることや、建物の迫力やシャープな造形を捉えるために広角レンズで撮影しているなど、写真の撮り方についても少し語られました。トークイベントの後はグループに分かれて見学ツアーが行われました。見学ツアーでは、セミナーハウスにあるブルータリズム建築を巡りました。まず向かったのは松下館。曲面を利用した彫刻的な造形が特徴的です。特殊な屋根が繋げられています。次に中央セミナー室。ピラミッド型の屋根は民家を参照したとされています。トップライトにより彩光されています。次にユニットハウス。松下館とは対照的に屋根が別々でありその形状は家形ではなく曲線です。大地は整地されることなく、軸線をずらし地形にそわせながら環状に配置されています。長期館の内部は複雑に入り組んでいて、迷路のようでした。本館は逆ピラミッド型で、上階ほど広くなっています。壁は斜めの部分が多く、床は段差が多く、階段は折れ曲がっています。奇抜で混沌と見えるデザインはモダニズムとは対照的で、当時の人々には新しく映ったかもしれません。老朽化している分古く見えましたが、過剰な装飾はポストモダン、建物全体の大胆な造形は脱構築主義にも通じる部分があると思いました。それはモダニズムを越えようとする高度経済成長期の挑戦のようにも感じました。
学生インターン:村松百歌(慶應義塾大学2年)