TOUR

湘南藤沢の名建築:槇文彦設計の慶應SFCや秋葉台文化体育館など

2023.06.24
https://accesspoint.jp/reports/shonan-2/

日時:2023年6月24日(土)9:00-16:30

見学場所:《慶應義塾大学SFC》槇文彦(1990)、《慶應義塾SBC》坂茂その他、《秋葉台文化体育館》槇文彦(1984)、《湘南台文化センター》長谷川逸子(1989)

参加者:16名

ナビゲーター:和田菜穂子

サポート:中井百合香(慶應義塾大学4年)、清水佑茉(慶應義塾大学4年)


今回のツアーは慶應SFCの小林博人研究室4年の中井さんと清水さんにキャンパス内をご案内いただきました。
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス、通称「SFC」は1990年に開設されました。正面には階段と、その中央に「カスケード」という水が流れる段差があります。現在は節電のために普段は水が流れていません。七夕祭など人が集まる時には水が流れます。階段の段差が不思議な間隔になっており、これは緩やかな丘の地形に沿っているからだという説が有力ですが、馬の歩幅に合わせたという説も考えられています。キャンパス中心部を一旦後にして、まずβヴィレッジへ向かいました。βヴィレッジは「未来のキャンパスは自分たちで創る」をコンセプトに掲げたSBC(Students Built Campus)というプロジェクトの一環で作られた場所です。その中にある坂茂が設計したβドームとβスタジオを見学しました。どちらも紙管が用いられています。紙管は価格が安く軽量というメリットがあり、ハニカム構造にすることで耐久性も高く、坂茂が設計する多くの仮設住宅などに用いられています。βドームは屋根の中央に採光する窓があり、ゲルの天窓に似ていると思いました。壁にトイレや機械等が隠されています。βスタジオは紙管を原材料にした日本初の恒久建築です。天井部に発泡スチロールのような素材も使われていて興味深かったです。βヴィレッジには滞在できる施設がいくつかあります。また、Ηヴィレッジという学生寮が開設され、キャンパス内の滞在施設の整備が進んでいます。
キャンパスの中心部を環状に囲む、ループ道路の内側の建築は全て槇文彦が設計しています。κ館、ε館、ι館、ο館は形がとても似ています。これは群像形という考えが基本理念となっているからです。群像形とは、一つひとつの建築が集合し、それらがつながり全体を形成するという考えです。(4つの文字もつなげられます。)1階にはピロティがあり、ル•コルビュジエのサヴォア邸とも似ています。SFCでは建築の間にある外部空間が非常に重視され設計されました。道や広場などオープンスペースと呼ばれる場所での人の振る舞いを想定し、建築を活性化させることが意図されています。道路には所々に植栽やベンチが置いてあります。これは視界が一直線に抜けていくことを阻害し、空間を多層化するためです。槇文彦はこれを「空間のひだ」と呼んでいます。またSFCには4つの軸が設定されており、意図的に遠くまで見える眺望の良い空間が作られています。キャンパスは都市の街区のようですが、緑がとても多いことに気付きます。SFC建設に際して環境問題も考慮され、キャンパスという都市が周囲の田園と融合することをコンセプトに、多くの植栽を用いて緑化されました。
次にΜ館(メディアセンター)の中に入り、最上階の部屋に2022年に開設された槇文彦ルームも見学しました。次いでτ館(大学院棟)、Δ館(研究棟)を巡り、キャンパス南側にある谷口吉生設計の湘南藤沢中等部、高等部の正面の外観だけを見ました。鴨池(ガリバー池)の美しい景色を眺めた後、鴨池の辺りにある学生ラウンジ「サブウェイ」で昼食をとりました。その後、Ω館(大講義室棟)、Α館(本館)、Θ館(大講義室棟)を順々に見学し、再びループ道路の外側へ行きセミナーゲストハウス、森アトリエ、DNPハウスの中まで見ることができました。

 

バスに乗り、次に向かった先は藤沢市秋葉台文化体育館です。槇文彦設計、1984年完成で、ステンレスの屋根が特徴的で、その形状も複雑です。外壁のタイルは、1985年完成の日吉メディアセンターと類似していました。内部の屋根は膨らみがあり、第二体育館の天井は教会のヴォールトのようにも感じました。コンクリートの壁や柱はSFCと類似していました。階段や窓の形状は幾何学的で、その他の槇文彦の建築と共通していると思いました。

 

 

最後の目的地は藤沢市湘南台文化センターです。長谷川逸子設計、1989年完成です。パンチングメタルや鉄骨の銀色と、多種多様な装飾が目を引きます。1980年台後半のポストモダン建築で、長谷川逸子の初期の作品です。槇文彦が審査員を務めたコンペで、この作品が選ばれました。コンセプトは「第二の自然としての建築」で、ガラス張りやドライエリアで自然光が取り入れられている点は、長谷川逸子のその他の作品にも共通していると思いました。

学生インターン:村松百歌(慶應義塾大学2年)