日時:2025年3月29日(土)9:40~12:00
見学場所:《レーモンド事務所》(アントニン・レーモンド)、《西参道公衆トイレ器・泉》(藤本壮介)、《代々木深町小公園トイレ》(坂茂)
参加者:15名
ナビゲーター:和田菜穂子
アントニン・レーモンドの事務所見学と、「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの建築散策ツアーを開催しました!レーモンド事務所では、1951年に建てられた笄町の自邸のリビングが復元された空間を見学し、彼の設計思想を体感する貴重な機会となりました。また、ツアーの前後には、建築家がデザインした公衆トイレを巡り、都市空間におけるデザインの役割について考える場面もありました。
最初に訪れたのは、《器・泉》(藤本壮介)です。西参道に位置するこのトイレは、従来の公衆トイレにありがちな閉鎖的な印象を払拭し、開かれたデザインが特徴的でした。特に、手洗い場が屋外に設置されている点が印象的で、子供でも使いやすいよう工夫されていました。一方、代々木深町小公園、はるのおがわコミュニティパークにある《透明トイレ》(坂茂)は、使用前は透明で、鍵をかけると曇りガラスになるという斬新な仕組みを取り入れています。利用する際の心理的な不安はあるものの、防犯対策としての有効性が高く、公衆トイレに遊び心を持たせつつ、都市空間における安全性を向上させる試みとして興味深かったです。しかし冬季はずっと曇ったままのようです。
レーモンド事務所では、復元されたリビング空間を中心に見学しました。実際に彼が使用していた椅子や照明が再現されており、当時の空間を肌で感じることができました。木材をふんだんに使った室内は温かみがあり、彼の「日本の素材を活かしたモダニズム建築」の特徴がよく表れていました。レーモンド事務所の所長による解説を通じて、彼の日本建築への理解がどのように自身の設計に影響を与えたのかを知ることができました。建築空間の保存と活用の重要性を改めて考えさせられました。
建築には、ただ空間をつくるだけでなく、人の暮らしや街の風景に影響を与える力があると考えます。今回のツアーでは、レーモンドが追求した「温かみのあるモダニズム建築」と、「THE TOKYO TOILET」が目指す「開かれた公共空間」という、異なる視点から建築の空間作りの可能性を感じることができました。それぞれの設計に込められた思いや工夫を知ることで、日常の風景の見え方も少し変わる気がします。次に街を歩くときは、ふと立ち寄った建築の細部にも目を向けてみたいです。
レポート:石川愛実(学生インターン)
慶應義塾大学3年