日時:2022年3月21日(月)13:30~15:20
見学場所:《パレスサイドビルディング》(日建設計、1966)
参加者: 40名
講演:小倉善明(日建設計OB)、土屋哲夫(日建設計 設計部門プリンシパル)
座談会聞き手:磯達雄
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最初に、日建設計OBでパレスサイドビルの設計にも参加された小倉善明さんから、「パレスサイドビルの歴史」について伺いました。短い工期の中でいかに設計と施工を進めたのか、ツインコアの構造はどのように決まったのかなど、貴重な裏側を教えていただきました。また、超高層建築が主流になろうとしていた時代に、中層で手仕事を活かした建築であるこのビルに注いだ想いを知ることができました。
続いて、日建設計で現在ご活躍なさっている土屋哲夫さんに、「パレスサイドビルの現在」と題してビルの特色をご紹介いただきました。地下鉄の駅を含む多様な機能を立体的に配置する構成や、公共空間として開放された屋上庭園、都市と館内両方の環境に配慮した外装など、近年の考え方と通ずる部分も多く、当時としてはかなり先進的な建物だったようです。また、2018年にこのビルに入居した日建設計竹橋オフィスについても伺うことができました。改装に当たっては、手仕事の跡が残るコンクリートの躯体や、設備機器のない開放感を活かすために天井を取り外したり、フロア中央の「大通り」に面してギャラリーを設けたりと、ビルが当初から持つ特徴を活かしたそうです。一方、環境のシミュレーションなどには最新の技術を取り入れ、快適なオフィス空間を実現しています。
第三部は「変わるもの、変わらないもの」というテーマで座談会が行われました。パレスサイドビルを手掛けた林昌二グループの他の作品が聞き手の磯達雄さんから紹介され、このビルがその後の複合ビルの原型になったことが見て取れました。パレスサイドビル以降に建てられた超高層ビルも取り壊しが続く昨今、年月を経ても価値を保ち、愛情を持って使い続けてもらえる建築を実現させるためには設計に限らず多面的な努力が必要となりそうです。
見学会では、8階の日建設計竹橋オフィスと屋上庭園を見せていただきました。オフィスは、天井高の違いなどでゆるやかに分けられた空間に打ち合わせ用のテーブルやカフェ、眺望を楽しめるスペースなどが配置されており、多様な働き方ができそうだと感じました。屋上では、リーダーズダイジェスト旧社屋から受け継がれた石や、伝書鳩をイメージしたルーバーの飾りといった細部の見どころも実際に見て回ることができました。ビルに関わっていらっしゃった方々の熱のこもったお話や見学会での実体験を通して、パレスサイドビルの魅力を再認識する機会になりました。
レポート:山東真由子(学生インターン)
慶應義塾大学医学部5年