ONLINE TOUR

【北欧建築紀行】パイミオのサナトリウム#1

2020.05.29
https://accesspoint.jp/reports/paimio1/

日時:2020年5月29日(金)21:00~22:00

見学場所:パイミオのサナトリウム

参加者:15名

ナビゲーター:和田菜穂子

 

参加者2名からの嬉しいメールと、AP学生インターン3名によるレポートをお送りします。


こんにちは!先日はありがとうございました。仕事が忙しくなかなかツアーに参加できませんでしたが、このようなオンラインツアーは時間的にも参加しやすく有り難かったです。

 

展覧会では、少し暗く感じていた病院の1部屋も、今回和田さんの目線で撮られた写真で、外の景色がこんなにも素敵に部屋から見えることがわかり、アアルトの色や曲線の優しさが更に伝わりました。また自分では見過ごしてしまうようなところでも、研究されてきた和田さんだからこその目線の写真で説明して頂き、普段のツアーとはまた違う感覚を味わえました。

 

なかなか実際に行くことのできない場所へ、このような形で連れて行って頂きとても楽しい時間でした。また、受講されてる皆さんが疑問に思うことや感心する点を聞けるのも、違った見方ができて勉強になりました。また素敵なところへ連れて行って下さい。次回も楽しみにしています。

Hさん(女性)


今回は初めてのZOOM体験で不安な点もありましたが、楽しく参加させていただきありがとうございました。実際になかなか足を運ぶことができないところで、この感染症で悩ましい世の中でアアルトが患者・医療従事者に心を配りながらどのように施設をつくったのか、ドアノブのデザインや床の機能主義などディテールのこだわりを知ることができ貴重な体験になりました。都市計画にも携わったアアルトの外とのつながりが考えられていて、実際に行っていないのですが何か場所の選択にも多くの示唆が含まれているのではないかと思いました。思いのほか当時の受付や、図書室、外に向けたテラスが開放的なこと、部屋がシングルではなく、ツインがベースになっていることも興味深かったです。また黄色い階段や、部屋の中のベッドのパイプの淡い綺麗なブルーが過去のものでありながら新しい色彩の印象を持ちました。ロバニエミの図書館では実際に座って本を読んだ時にアアルトの設計の求めるものを知りました。その後どこまでオリジナルかわかりませんでしたが今でも多くの市民に愛されて活用されている空間になっていました。きっとパイオミの病室も療養してみてわかるデザインの良さがあるのかなと思います(現実的な話ではないですが)。また、機会があれば参加させていただきます。

Sさん(女性)


病院建築についての解説は医学を学んでいる者としても興味深いものでした。パイミオのサナトリウムの設計に当たっては日当たりや換気、院内感染の防止や長期療養者の生活の質などが重視されましたが、これらの視点は現代にも通じるものです。当時の知識や技術を最大限に生かし、結核患者にとって良い環境を整えたことが見て取れました。

また、今回のツアーは単なる講義にとどまらず、参加者の方の疑問や指摘をきっかけに度々議論が盛り上がりました。中には、「椅子の向きをずらして対面しないように工夫しているのではないか」など、感染対策が気になる時期ならではの着目点もあったのが印象的でした。

山東真由子(学生インターン)

慶應義塾大学医学部4年


私は大学の課外授業で和田先生からアアルト展の解説をしていただいたことがあります。そのときも、パイミオのサナトリウムについて色づかいや埃がたまらない工夫などを説明していただいて、少し詳しくなった気でいました。しかし、今回のヴァーチャルツアーでは、パイミオのサナトリウムだけにフォーカスし、1時間かけてたくさんの写真とともに解説していただいたので、構造や光の使い方についてより深く知ることができましたし、実際に行ってみたいという気持ちが強くなりました。

三上圭佑(学生インターン)

慶應義塾大学理工学部1年


ヴァーチャルツアーを通して印象的だったのは、「サナトリウム」を介したアアルトのデザイン哲学、つまり、①ヒューマニスト(人間愛に溢れ人道的な姿勢を持つ人)的デザインを大切にしていたこと、②周りの自然環境との関わりを尊重していたこと、という点です。100年近く前のフィンランドで誕生した建築だと考えるととても遠い存在のような気がする「サナトリウム」ですが、2020年5月現在、「半ば息苦しさを感じ始めた東京の自室をどうにかしたいとあれこれ模索中」色眼鏡を通して見てみると、パンデミックを生き抜くデザインの知恵を後世の私たちに示してくれていることがわかりました。緑っぽいものが身の回りにあると落ち着くよ、柔らかい光を取り入れるといいよ、静かな環境は休まるよ、などなど。

 

最近、「森の音」をスピーカーで流しながら、間接照明(というオシャレなものは買えないので、家中の小さな照明で代用)とキャンドルで強すぎない光を確保し、風通しを良くして、ヨガをして心を落ち着ける、という巣ごもり対策を試行錯誤して編み出したところでしたが、アアルトのデザイン哲学にどこか通じる部分があるように感じて、以前よりも強く親近感を覚えました。

 

これまで書籍・建築学生/旅行者のブログなどで度々見てきた「サナトリウム」でしたが、やはり、アアルト研究をされている先生から直接お話をきき、先生が見た風景を追いかけて行く経験は、彼女の価値観や視点からアアルトの意図を解釈することができるという点で、非常に新鮮なものです。それが、東京のワンルームで実現するなんて!ヴァーチャルツアーならではの醍醐味ではないでしょうか。(第2回が開催されるようです、皆さんもぜひ!) アアルトの人間味あふれるデザインと参加者の皆さんとの交流で、心温まる一夜となりました。

岩永薫(学生インターン)

東京大学大学院博士課程1年