TOUR

永田町に息づく名建築ツアー+屋上区

2021.09.05
https://accesspoint.jp/reports/nagatacho/

日時:2021年9月5日( 日)14:00~17:00

見学場所:屋上区イベント《NAGATACHO GRID》にて、《赤坂プリンス クラシックハウス》(宮内省内匠寮、1930年)、《衆議院議長公邸》(内井昭蔵、2001年)《参議院議長公邸》(岸田日出刀、1961年)、《首相官邸》(下元連、1929年)、《国会議事堂》(1936年)、《憲政記念館》(海老原一郎、1972年)、《日本水準点》(佐立七次郎、1891年)

参加者:11名

ナビゲーター:和田菜穂子


雨が心配の日であったとは思えないくらい、よく晴れて散歩日和の1日となりました。永田町駅が最寄りの赤坂クラッシックハウスに集合し、ツアーがスタートしました。本日は、初めてAPツアーに参加された方や職場の近くだから詳しくなりたくて参加してみたという方、写真を撮るのが趣味な方など、おしゃべりをしながら楽しい街歩きとなりました。

 

集合場所の赤坂クラッシックハウスを巡る前に、まず向かったのは《NAGATACHO GRID》。ここは新たな社会を構築する人が繋がり活動することをコンセプトにしているコミュニティビル。地上6階、地下1階、屋上空間からなるビルで、会議室やワーキングスペース、記者会見やセミナーを行える大きな部屋、映画の上映会やパーティー向けの部屋、キッズルームなど、様々な用途に使用できるつくりとなっていました。私たちは屋上にお邪魔してきました。ここでは、東京ビエンナーレ2020-2021における、屋上区の「屋上めぐり」が開催されていました。ビルの多い東京は、全ての屋上を合わせると、なんと江戸川区1個分に相当するそうです。そのスペースを有効活用しようということで始動したのがこのプロジェクト。屋上区というのは、東京で24番目の区という意味で付けられたそうで、この会場で必要事項に記入すると、屋上区の住民票もいただくことができました。また、ウィッシュバルーンというイベントも開催しており、青い風船が結んである半紙に墨で言葉を書くことができました。「上昇」の縁起を担いだ素敵なイベントで晴れやかな気分になりました。地上に戻り小腹が空いたので時計を見たらちょうどお昼の3時。1階に店舗として入るドーナツ屋さんは多くの人で行列になっていました。またの機会にドーナツを食べに訪れたいなと思いました。

 

集合場所の《赤坂プリンス クラシックハウス》(宮内省内匠寮、1930年)に戻り建築ツアーがスタート。この洋館には細かな工夫が施されており、建物を一周回りながら参加者全員で様々な特徴を発見し合いました。洋館特有の玄関ホールの車寄せ、半円を組み合わせたデザインの壁、緑青でできた雨樋、ぐるぐる巻きの柱、クラシカルなアーチなど、チューダー様式やゴシック様式などが入り混じる設計でした。また、シンメトリーではない点も特徴的で、正面から見て左側はサンルームとなっており、小笠原伯爵邸との共通点も感じました。建物の裏には免震構造となっている様子も見ることができました。また、皇族の土地だったため敷地が広く、ローズガーデンや広場もあり、都会の中にある自然の空間として多くの人に親しまれている様子でした。また、隣にある《赤坂プリンス》にも行き、36階にあるホテルのロビーを拝見しました。ロビーでは、期間限定で展示されている大巻伸嗣さんの作品を見たり、東京の景色を一望したりすることができ、参加者全員作品や窓に釘付けになりました。

 

その後は、国会に関連した様々な建物を見て回りました。隣同士で立っている《衆議院議長公邸》(内井昭蔵、2001年)《参議院議長公邸》(岸田日出刀、1961年)は、なんとなく和の印象を受ける建物でした。そして、対照的なつくりの衆議院議員会館と参議院議員会館の横を通り、《首相官邸》(下元連、1929年)を眺めながら坂道を上って歩いて行ったところに、《国会議事堂》(1936年)が堂々とした趣で建っていました。

 

最後に向かったのは国会前庭と《憲政記念館》(海老原一郎、1972年)。国会前庭には、《日本水準点》(佐立七次郎、1891年)という高さの基準を示した重要文化財がありました。佐立はコンドルに学んだ一期生の1人であり、郵政の建物を設計した人です。また、この庭には三権分立を示した時計塔もあり、毎日決まった時間(10時、13時、17時)に鐘がなるようです。憲政記念館は議会を模した議場や国会の歴史を知ることができるコーナーがありました。取り壊しが決まっていると聞き残念ですが、新たな施設が誕生するのを楽しみにしています。

 

今日はパラリンピックの閉会式のため、国会周辺も道路規制や警備が厳戒態勢となっていました。オリンピック・パラリンピックが幕を閉じ少し寂しさのようなものを感じると同時に、秋を感じる気候になってきました。街歩きに最良の季節の訪れを感じ、様々な建築を見て回りたい気持ちになりました。

 

学生インターン:舟山織沙(慶應義塾大学 法学部2年)