TOUR

【特別見学会】室伏次郎氏の自邸

2023.07.16
https://accesspoint.jp/reports/murohushi/

日時:2023年7月16日(日)13:30-15:30

見学場所:室伏次郎自邸

参加者:20名

ゲスト:室伏次郎

ナビテーター:若原一貴


煮えつくような暑さの中開催された今回のツアーでは、建築家・室伏次郎さんのご自邸を訪れました。最寄り駅から歩いて15分ほど。道中には遠藤克彦氏や椎名英三氏が設計した住宅があり外見だけ見学していきました。北嶺町の閑静な住宅街を歩いて室伏邸に到着。コンクリートの箱を積み上げたような建物を前にして写真を撮っていると、室伏さんが出迎えてくださりました。
早速室内へ。まずは1階の室伏さんのアトリエを拝見。部屋の中央には大きなテーブルが斜めに置いてあり、決して広いとは言えませんがどこか落ち着いて集中できるようなスペースでした。1階が終わると今度は室伏さんご自身が住まれている2階へ。打ち放しの壁に囲まれた自然光だけのほの暗い空間ですが、不思議と安らぎを感じます。また、外階段は建設現場で使われる「足場」で組まれており、そこには「竣工から50年以上経っても未だ工事中」という意図があるのだそうです。やや心もとないその階段を、私を含め参加者のみなさんも一歩ずつ慎重に上り下りしていました。次に屋上へ。そこには都市住宅とは思えないほど見晴らしの良い庭が広がっていました。室伏邸は容積率の法規が定められる前に建った住宅のため、このような豊かな空間が実現しているのだそうです。当日は雲一つない晴朗な天気で、屋上の草木は青々と輝いていましたが、それゆえ参加者の私たちも汗だくになっていました。しばらくして3階に降りると息子で建築家の暢人さんが飲み物を出してくださり、みなさん涼みながら室伏さんのお話を聞きました。室伏さんが建築家を志すようになった経緯、さらに師の坂倉準三との出会いなどを話してくださり、僕にとっても人生の大先輩としてとても勉強になるお話でした。その傍では室伏家の家族である2匹の猫さんが、私たちにはお構いなく床や本棚の上でだらんと寝転がっていました。
現在の室伏邸は1階にアトリエ、2階に室伏さんご夫妻、3階・4階は暢人さんご家族という構成です。居住者の構成や人数の変化に合わせて、その都度フロアの使い方を変えてきたとのこと。一時は2階を「賃貸」にしたこともあるそうです。「中の配置は変わっても建物自体は洞窟みたいでずっと変わらない」とおっしゃっていましたが、まさに室伏さんの思い描く「あるべき都市住宅の姿」なのだと思いました。随所にその洞窟らしさを感じる建物で、3階の天井のコンクリートが時間の経過とともにたわむようになり、それを支えるために4階に梁の補強がされていますが、これも室伏さんにとっては「洞窟に住まう」ひとつの過程にすぎないのでしょうか。今回は数時間の訪問でしたが、何年後かにどんな変化をしているのかまた見に来たいと思えるような素晴らしい住宅でした。蒸し暑さで汗を拭きながら、私たち参加者は頭上の太陽より晴れやかな表情で室伏邸を後にしました。
学生インターン:若原樂(高校2年)