11月半ばの午前中に、白金台周辺を歩く3時間のまち歩きツアーを行いました。メインは港区立郷土歴史館の館内ツアーですが、その前に1時間ほど周辺をあるいて、江戸時代から続く、地形、街並み、遺構などを確認しました。目黒通りを一本入って最初に向かったのは、記念碑《福沢諭吉先生永眠之地(旧福沢諭吉墓所)》(1977年)。慶應の三田キャンパスや慶應幼稚舎の校舎を手がけた、谷口吉郎による設計です。福沢諭吉の最初の埋葬地で、江戸時代からある寺町の一角に書籍を模したと思われる記念碑があります。次に向かったのは、内井昭蔵の《明治学院国際会館》(竣工1989年)。シンプルな外観のなかに、曲線やタイルの使用など内井らしい表現がみてとれます。向かいにあるのは、日本住宅公団芝白金団地。団地の名前にある芝白金は、旧町名の芝白金今里町に由来します。今里の名前は、坂を登ったところにある元禄今里地蔵尊でも確認できます。1945年に現在の場所に移されたもので、やや小さな地蔵尊に比べて不釣りな建物は1933年につくられた神輿倉だったため。そこから旧三田用水路跡を歩いて、《目黒通り》に戻り、本日のメインである《港区立郷土歴史館等複合施設「ゆかしの杜」》(2018年改修)へ。内田祥三による《公衆衛生院》(1938年竣工)を保存・活用したもの。スクラッチタイルの外観が印象的です。館内解説は、改修工事に関わった方にお願いをしました。改修工事は文化財指定を受ける前に行われたとのことで、80年前の建物を既存法規に対応させて活用しつつ、歴史的な保存を行ったという意味でも先駆的な意味を持っています。保存部分と手を加えた部分を区別しつつ、いかに調和をとったデザインを作るか、という点を中心に見学しました。各所に解説パネルはありますが、実際に解説を聞きながら見学をするとより理解が深まります。最後に、隈研吾の《瑞聖寺庫裏(2018年竣工》を見学し、解散となりました。水庭をたたえた静かな佇まいが素晴らしい建築で、若い人たちがポツポツと訪れていたのが印象的でした。
レポート:岸佑