見学先:全日本海員組合本部会館(大高正人設計、野沢正光建築工房改修)
参加者:16名
ゲストナビゲーター:白岩透、石黒健太(野沢正光建築工房)
企画:磯達雄
朝日カルチャーセンターの大高正人についての講座を受講した方を主な対象として、全日本海員組合の本部会館を見学しました。日比谷線六本木駅2番出口を出てすぐの立地に建つこの建物は、大髙正人氏の設計によって1964年に竣工し、2023-24年に野沢正光建築工房の設計により改修工事が行われました。
全日本会員組合の方と野沢正光建築工房の方と共に外観から屋上、5階会議室と地下の書庫、そしてホールと展示スペースを巡りました。歴史と想いを継承していくこと、そして現代において過ごしやすく安全な空間にすることという2つの一見相反する指針を実現した改修を間近で見ることができ、野沢正光建築工房で改修設計を担当された白岩さん、石黒さんのお話しも興味深く聞くことができました。
なかでも、屋上の改修は衝撃的でした。現在デッキとなっており職員の方々が休憩をするスペースとなっています。しかし当初の建築では屋根としての荷重のみしか考えられていなかったそうです。そのため、オープンスペースとして改修するにあたり、置かなければならない設備はもちろん、床に貼られている板一枚一枚まで全ての荷重を緻密に計算したそうです。これも全て「継承する」ということへの執念にも近い想いがあったからなのだと心を揺さぶられました。
また、一階と地下はオープンスペースとして生まれ変わり一般開放された資料室や展示室で全日本海員組合について理解を深めることができます。改修されて付加された空間の中にも当時のコンクリートが剥き出しになり現代とは異なる細かな型枠の跡や、それを補強した新たな痕跡を見ることができます。
知れば知るほどこの建物に込められた想いが伝わってくる奥深く温かい見学会でした。
レポート:小島瑶子(桑沢デザイン研究所)