RESEARCH

【特別見学】聖ヨゼフ病院(旧横須賀海仁会病院)

2020.03.25
https://accesspoint.jp/reports/joseph/

日時:2020年3月25日(水)10:00~13:00

見学場所:聖ヨゼフ病院

参加者:5名

ナビゲーター:和田菜穂子


石本喜久治設計の聖ヨゼフ病院(旧横須賀海仁会病院・1939年竣工)を特別に見学させていただきました。この建物は2014年にドコモモジャパンによって保存する価値がある歴史的建造物として選定されています。実は石本建築事務所ではこの建物の存在を把握しておらず、しばらくの間、自社の作品リストから漏れていたようです。

 

石本喜久治は東京帝国大学在学中、1920年に山田守、堀口捨己らと分離派建築会を結成し、中心的人物として近代建築運動を行いました。卒業後は竹中工務店に入社し、東京朝日新聞社、日本橋白木屋などを手がけます。ドイツ・バウハウスなどヨーロッパを視察して廻り、日本でいち早くモダニズム様式を取り入れます。1927年に独立し、片岡安とともに大阪で片岡石本建築事務所を創設、1931年に石本建築事務所に改称しました。1939年に竣工した聖ヨゼフ病院(旧横須賀海仁会病院)は、当時事務所にいた立原道造が担当したと言われています。この病院はもともとは海軍の病院として設計されました。弧を描く白い外観が特徴です。アルヴァ・アアルトが設計したパイミオのサナトリウムが1932年の竣工ですから、石本は参照していたかもしれませんね。戦後、海軍からカトリック系教会に経営権が移り、聖ヨゼフ病院に名称が変わりました。その際、庭に小さな祈りの場、聖堂が設けられました。

 

見学日の前日3月24日に新館がオープンし、病院機能は全て新館に移動しました。数日前まで診察が行われ、入院患者がいた建物のはずなのに、なぜか人の姿がなくなっただけで廃墟のような物悲しい雰囲気を纏っていました。病院だからでしょうか。不思議なものです。

 

今回の見学会は限られた人数でおこないました。ほとんどの部屋は改修されていましたが、一部オリジナルが残されていました。例えばかつての院長室だと思われる部屋(会議室)にはラジエターとカバー、木製の床、可愛らしい色のタイル床、カーテンボックス、壁に据え付けられた時計の文字盤などです。私が個人的に注目したのは屋上塔屋の洗濯場です。同潤会アパートなど1930年代の集合住宅によく見られる人研ぎの流しがありました。近づいてみると、なんと、洗濯板のギザギザが人研ぎの流しと一体化しているのです。私にとって初めてみたデザインで、戦前の水まわり研究者としては、予想外の収穫を得ることができた有意義な見学会でした。

レポート:和田菜穂子