TOUR&PARTY

【AP夏企画】ツアー&納涼会:アルド・ロッシの《ジャスマック青山》ほか

2023.08.27
https://accesspoint.jp/reports/jasmac/

日時:2023年8月27日(日) 16:00~20:00 

見学場所:≪ジャスマック青山≫(1991年) 

参加者:20名 

ナビゲーター:AP理事(和田菜穂子、磯達雄、倉方俊輔、若原一貴、岸佑、種田元春) 


 今回のツアーは表には姿を現さないけれど、建築の実験場としての表参道を代表する建築群を巡るツアーであった。表参道には安藤忠雄の≪表参道ヒルズ≫や伊藤豊雄の≪TOD‘S 表参道ビル≫、中村拓志の≪東急プラザ表参道原宿≫など、表参道の顔として現在役割を果たしている建築がメインストリートに数多く建設されている。しかしながら、このような商業施設が建築作品と認められるようになったのは最近のことであり、その裏側にはファッションの街として表参道と同時に建築の実験場として発展してきた背景がある。今回のツアーではその建築の実験場としての表参道をめぐり、ツアーの締めとして世界的建築家であるアルド・ロッシの≪ジャスマック青山≫で懇親会を開催するものであった。 

 

 ツアーにおいて私が個人的に印象に残った建築が3つある。先ず1つ目は團紀彦が1991年に設計した≪青山ファッションカレッジ≫である。この建築物は2つの対となる建物からできており、ファサードは緩く弧を描き、対となる建築から構成される円形の広場が特徴的な建築である。この建築の注目点はバブル期ならではの素材に対するお金の使われ方である。例えば、ファサードの壁の装飾には天然石が用いている。また、これに加え、コンクリートの打ちっぱなしや柱には砂岩が使用されている。バブル期には、このように高価な素材や多様な素材など贅沢な素材の使われ方がなされた。こうしたバブル期と対照的な建築が、2つ目の永山裕子の2007年に設計された≪URBANPREM南青山≫である。ファサードが大きくせり出し、横幅の異なる窓が特徴的なユニークなデザインの建築であるが、先に見た建築と比較すると素材がコンクリートの打ちっぱなしのみであることを確認できる。バブル期の勢いのすごさ、そしてバブル崩壊後の素材に頼ることの無い表現方法の模索の歴史を感じることのできる建築であった。3つ目は今回のツアーの大目玉であるアルド・ロッシの≪ジャスマック青山≫である。アルド・ロッシは建築界のノーベル賞と称されるプリツカー賞を受賞した世界的権威のあるイタリアの建築家である。彼の日本にある代表作は《ジャスマック青山》以外にも福岡の《ホテルイル・パラッツォ》などがあり、どの作品もカラフルなファサードが特徴的である。《ジャスマック青山》はその中でも特に色彩豊かであり、ファサードは青色の大理石に入口にギリシア様式のペディメントと柱を抽象化したものを構え、さらに側面はクリーム色の壁面に赤の窓枠、その両脇に大理石の柱を装飾しているのが特徴である。内部見学の際に彼直筆のスケッチが飾られていたが、そこには彼のこの建築の色彩に対するこだわりが描かれていたことからも、この建築において色彩が非常に重要な要素であることがわかる。内部もまた外観同様カラフルでサーモンピンクやクリーム色で彩られていた。入り口は三階まで吹き抜けで開放的な空間となっており、入り口を入ってすぐの所に螺旋階段があり懇親会場となった地下一階へ続いている。床は大理石とモザイクタイルでできており、階段部分には木材が使用されている。まさしくバブル期を代表する建築であり、ポストモダンな建築であった。懇親会の様子は非常に和気藹々としたものであった。ポストモダンの研究家とアルド・ロッシの研究家の即席シンポジウムが行われたり、種田元晴先生の理事就任という非常に喜ばしい報告もあった。様々な先生方のお話の中で、特に印象的だったのが「ポストモダン建築はメンテナンスが難しいという理由でなくなりつつあるけれど、日本のバブル期を投影した歴史的遺産として残して行かなければならい」という言葉である。このツアーを通して表参道、延いては日本の建築的発展した背景にはこうした建築の実験場の存在があり、ポストモダンのような合理的、機能的な建築からの脱却を図った建築の存在があったからだと感じた。今後もツアーを介して建築の魅力を発信し続けたらと思う。 

レポート:太田涼介(学生インターン) 

慶應義塾大学4年