TOUR

【銀座ライオンツアー 】銀座のレトロビルをめぐる

2022.05.03
https://accesspoint.jp/reports/ginza-lion2022/

日時:2022年5月3日(火)10:00-13:30

見学場所:教文館ビル(アントニン・レーモンド/1936)、銀座和光(渡辺仁/1932)、

銀座ライオン(菅原栄蔵/1934)、交詢ビルディング(横河時介/1929)、

電通国際ビル(横川工務所/1933)、泰明小学校(東京都/1929)

参加者:10名

ナビゲーター:岸 佑

 

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今回のツアーは、今年2月に国の有形登録文化財として登録された「銀座ライオン」をメインに、銀座に残る昭和戦前期のビルを見学しました。

 

午前10時、JR有楽町駅中央口駅前広場に参加の皆様方が集合。現在と戦前の銀座の地図で区割りがあまり変わっていないことを確認し、はじめに教文館ビルに向かいました。教文館ビルは、アントニン・レーモンドが設計し、1936年に竣工された老舗書店・出版社です。外観はコンクリートを露出させたモダニズム建築であり、内部は、エレベーターホールにアール・デコの装飾が見られました。ビル内に2つの会社があり、階段がそれぞれにあるなど、行き来はできるものの区切られた空間とされていて、ボコボコとしたガラスの表面や照明によってレトロな内装となっていました。次に、銀座和光に向かいました。銀座和光は、渡辺仁が設計し、1932年に竣工された建物で、屋上の時計は銀座のシンボルとなっています。ネオ・ルネサンス様式が採用されていて、一層目は凝った細かい装飾、二層目は他の層より長く簡略化されたデザインとなっていて、三層目はギリシア風の柱やアーチが見られました。アール・デコやモダニズム建築の要素も組み込み、銀座の街に上手く溶け込むように設計されていました。

 

その次に、今回のツアーのメインである銀座ライオンへ。銀座ライオンビルは、菅原栄蔵が設計し、1934年に竣工、1978年に全面改装され現在の外観となっています。文化財となったのは1階のビアホールと6階のクラシックホールです。創業当時から内装は殆ど同じままであり、ビアホールは落ち着いた色のタイルが天井や壁に敷き詰められていて、葡萄の房をモチーフとした丸いカラフルなライトがあり、背後の大型ガラスモザイク壁画が印象的でした。クラシックホールは、無機物的で直線と対称性が特徴なアール・デコ調で、窓ガラスが幾何学模様のステンドグラスになっていて、天井は大理石でできた凹凸のあるデザインで山型になっていました。また、全体的に曲線は無く、空間を仕切る衝立にもアール・デコのデザインが見られました。

 

最後に、交詢ビルディング、電通国際ビル、泰明小学校をまわって有楽町駅に戻りました。交詢ビルディングは、横河時介が設計し1924年に竣工し、現在は歴史的建造物であるファサードを残して10階建てのビルに建て替えられています。ファサードの部分はネオ・ゴシック調になっていて、尖塔アーチやステンドグラスが見られ、窓が大きめに取られていて壁面を減らしているのが見えました。次に、電通国際ビルは1933年に竣工し、当時の面影は1階の外壁部分によく見られます。この建物はアール・デコ様式の建築であり、側面の壁はガラスが敷き詰められていました。また、交差点からの視線を意識して、建物の隅を曲面にするという工夫がされていました。同じく、1929年に竣工された泰明小学校にもアール・デコ様式が用いられていました。関東大震災を機に耐震・耐火性の強い鉄筋コンクリートが用いられ、カーブを描く壁面やアーチ型の窓が特徴的であります。また、校舎にはツタが絡まり、柱や入り口の装飾も印象的でありました。

 

以上より、今回は銀座のレトロビルを巡るツアーでありました。私は、銀座のあちこちに戦前の建築が見られるということを発見したと同時に、新しい現代的なビルの中にあっても浮いたり印象的に負けたりすることなく、風景の中に上手く溶け込むことのできる設計とデザインのすばらしさに感動しました。また、様々な工夫を凝らしてこのような建物を残そうと努力してくださる方々のおかげで、現在でも実物を見ることができるのだと感じ、そのような方々に改めて感謝をする機会となりました。

 

レポート:小倉琴未(学生インターン)

慶応義塾大学文学部1年