TOUR

【特別見学会】ル・コルビュジエのカップ・マルタンの休暇小屋の再現

2024.02.25
https://accesspoint.jp/reports/cabanon/

日時:2024年2月25日(日)10:00~17:00

見学場所:《カップマルタンの休暇小屋inものつくり大学》

参加者:16名

企画:和田菜穂子

特別講師:藤原成暁(ものつくり大学名誉教授)


南仏の海岸沿いのカップマルタンという地に、ル・コルビュジエが建てた小さな休暇小屋があります。妻イヴォンヌと暮らすためのミニマムな空間です。

 

ものつくり大学の藤原先生と八代克彦先生は2011年夏に学生とともに現地を訪れ、実測調査を行いました。見学時間は一般の人たちと一緒に行い、1回につき20分という限られた時間だったため、事前に用意した計測のための独自のツールを用いて行なったそうです。建物自体が大変貴重な文化資源であるため、藤原先生と学生たちは美術品を取り扱うかのごとく「白手袋」を持参しました。それが功を奏して、建具など触れても良いこととなり、ディテールの実測が行われたそうです。

 

今回も8人ずつ二つのグループに分かれて、30分づつに区切り、小屋の内部で藤原先生の解説をお聞きしました。開口部を全部閉じたとき、開けたとき、両方を体験することによって、光や風の通り抜けを体感することができます。開口部の位置、天井や壁に彩色された色、目地、家具の配置、天井高の違いなど、ミニマムな空間に散りばめられたル・コルビュジエのこだわりが、それぞれのディテールに表れています。建築はやはり内部空間に身を置かないと本質を知ることはできませんね。それをあらためて実感する機会となりました。事前に藤原先生と八代先生の共著『図解 世界遺産ル・コルビュジエの小屋ができるまで カップマルタンの休暇小屋、現地実測調査図面』を読んでおりましたが、写真や図面だけでは全てを理解することは不可能です。私が建築ツアーを続けているのもそういう理由があるからです。

 

内部見学の後、講義室に移動し、約1時間のレクチャーを行なっていただきました。藤原先生の熱い想いが伝わってきました。実はものつくり大学の《カップマルタンの休暇小屋》の近くに、建設途中の《小さな家(母の家)》があります。いつか完成したらまた来たいと思います。完成するためにも、退官された藤原先生の意思を受け継ぐ人材が育って欲しいと強く願っています。

 

その後、オプション希望者と一緒にバスで移動し、行田の街歩きをしました。行田は足袋の産地で多くの蔵が残っています。蔵の改築工事を行なっている朽木さんにご案内いただきました。行田市は日本遺産となり、これからも蔵の保存活用をしながら魅力的な街づくりに力を入れていくようです。あいにくの雨でしたが、充実した1日でした。

 

レポート:和田菜穂子