TOUR&LUNCH

【朝日カルチャー連携】磯崎新のなら100年会館とレストラン紫翠

2026.02.02
https://accesspoint.jp/reports/asahi-isozaki/
日時:2026年2月2日(月曜日)11時 30分~17時
見学場所:《吉城園》、《紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良》、《なら100年会館》など
ナビゲーター:磯達雄、和田菜穂子(東京建築アクセスポイント)
参加者:6名

 


朝日カルチャーセンターの講座「【建築入門】昭和の巨匠建築家たち/磯崎新」の受講者を主な対象として、奈良ツアーを開催した。まずは奈良公園の一画にある「紫翠ラグジュアリーコレクションホテル奈良」へ。設計者は大成建設、デザイン監修・インテリアデザインを隈研吾建築都市設計事務所が担当している。レセプションやレストランの機能を収めている棟は、1922年に建てられた旧奈良県知事公舎をリノベーションしたもの。元の建物の設計には、岩崎平太郎がかかわったとも言われる。岩崎は京都府社寺課の亀岡末吉や京都帝国大学建築学科の創設者である武田五一の下で設計を行い、出身地の奈良県内で和風建築にアールヌーボーを合わせたような建築を多数設計した建築家である。

 

ランチをとったタイニングルームは、板張りの床に欄間や床の間が組み合わされている。美味しい土瓶蒸しなどを味わったあと、他の個室や蔵を改装したバーも見せてもらう。一番の見どころはラウンジ「寧楽」で、洋間なのだが格天井や肘木のような細部のデザインに和風を取り込んでいる。その隣は知事の応接室だった部屋で、1951年に昭和天皇がサンフランシスコ講和条約と日米安全保障条約の批准書に署名した歴史上重要な場所でもある。続いて新築の宿泊棟へ移動し、いくつかの客室内を拝見。間口いっぱいのガラス面を透して、内外が視覚的に連続する。プランは同じでも、見える庭の部分が違うので、部屋ごとに異なる景色が味わえる仕掛けだ。隣接する吉城園にある奈良県指定有形文化財「旧正法院家住宅」や、旧興福寺子院「世尊院」を改修した茶寮「世世」も見させてもらい、充実したホテル見学となった。

 

タクシーに乗って、JR奈良駅西側へ。むくりのついた黒い曲面で覆われた、何とも形容しがたい不思議な外観の建物が、今回のツアーの狙いである磯崎新の作品「なら100年会館」(竣工:1998年)である。館の担当者による解説付きのバックステージツアーで、通常の観客は入ることができないところまで見させてもらう。エントランスホールから、まずは大ホールへ。水平移動する2階バルコニー席は、1970年大阪万博のお祭り広場以来、自在に可変するイベント空間を追求してきた磯崎らしい意欲的な試みだったが、現在、動かすことは行なっていないとのこと。ツアー参加者が舞台に上がって演者の擬似体験も味わえた。楽屋や照明・音響のコントロールルームにも寄る。

 

その後、中ホールへ。二重のガラスで全体が包まれた類のない音楽ホールである。東京建築アクセスポイントの和田がピアノを弾いて、音の響きを確かめた。楕円形プランの先端部に位置する中ホール・ホワイエは、天井が高い崇高な空間。壁の途中に見える出っ張りは、大空間建築を折り畳んだ状態でつくり、伸ばして完成形にするというパンタドーム構法の特徴を示すもの。建物をつくるプロセスがそのまま表現になっているというのも、いかにも磯崎の建築らしいところと言えるかもしれない。

 

「なら100年会館」が1990年代の磯崎を代表する作品であることを、改めて認識させられた見学ツアーとなった。

 

レポート:磯達雄