TOUR

【AP会員限定】復活!幻の辰野建築:足尾銅山

2025.11.30
https://accesspoint.jp/reports/ahio/
日時:2025.11.30(日)10:30-16:30

見学先:日本設計《足尾銅山記念館》(2025年竣工)、ヨコミゾマコト《富弘美術館》(2005年竣工)

参加者:18名

ゲストナビゲーター:坂田充弘(日本設計)

企画:岸佑(東京建築アクセスポイント理事)


11月30日に、AP会員限定の一日バスツアーを企画しました。場所は栃木県の足尾です。ゲストに日本設計の坂田充弘さんをお招きして、今年竣工した《足尾銅山記念館》(2025年竣工)の解説をお願いしました。この建物は、辰野葛西事務所が関わった《足尾鉱業所》(1911年竣工)を復元したもの。オリジナルの建物は、10年ほど足尾で使われたのちに、足利市に買い取られて移築され、1970年代まで市役所として使われたのち取り壊されました。今回は、当初立っていた場所に、写真などから寸法を導き出して復元したものです。併せて、隣接している掛水倶楽部という迎賓施設や足尾銅山の所長宅なども見学しました。

 

日光駅に集合したのち、バスに乗り込んで向かったのは、ヨコミゾマコト《富弘美術館》(2005年竣工)です。翌日から改修工事のために休館とのことで、すでに足場が組まれていた状態でしたが、円形を組み合わせた独特な展示空間と星野富弘の作品展示を鑑賞しました。すぐそばにあるお蕎麦屋さんで昼食をとったあと、あらためて足尾に向かいます。道中のバスでは、坂田さんによる足尾の近代史の解説を聴きながら、事前知識を蓄えていきました。江戸時代から銅が産出したことで知られる足尾は、明治以降の日本社会の光と影を抱えた土地です。田中正造の天皇直訴で知られる足尾鉱毒事件の一方で、電灯の普及と共に電線の需要が多くなり、また海外に輸出されるなど日本の近代化に大きな影響を与えました。最盛期、足尾の人口は宇都宮に次いで2番目の規模を持ち、大いに栄えたといいます。

 

さて、いよいよ復元された《足尾銅山記念館》の内部に入ります。写真や資料などから仕上げなどが判明した部屋は徹底的に推測を排除し復元を行い、それ以外の箇所との明確な区分を行っています。加えて、展示は見応え十分。「2時間はかかる」と言われていた通り、ひとつひとつ展示をじっくりと見ていく価値がある建物だと思いました。冬季も《足尾銅山記念館》は見学可能とのこと。もう一度訪れて展示をじっくりとみながら建物を堪能したいと思われた建物でした。

 

レポート:岸佑