日時:2018年7月14日(日)14:00~20:00
見学場所:阿部勤自邸《中心のある家》
参加者:20名
スペシャルゲスト:阿部勤(建築家)
ナビゲーター:若原一貴
企画:阿久根直子
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今回は建築家である阿部勤先生のご自宅にて見学会および食事会をさせていただきました。しとしとと雨が降るあいにくの天気で、予定していたBBQはできなくなってしまいましたが、暑くも寒くもなく、あまり強い光が入りすぎることがないので阿部先生曰く「この家ではベストな天気」だそうです!どんな人にも優しい阿部先生の人柄に感動し、たくさんの居場所がある素敵なおうちをじっくりと堪能できた会でした。
外溝では所沢ニュータウンのグリッド街区に対して建物を約30度ずらすことでポケットパークのような場所が作られており、プライベートな空間としての住宅が均質に建ち並ぶ街中に、セミパブリックな空間が生まれています。
この住宅自体の構成は二重のコンクリート壁をロの字に囲い、その間は基本的にはキッチンや階段など機能を持つような空間ですが、一部がテラスのような外部になったり2階とつなぐ吹き抜けであったりしました。そのために「外部のような内部、内部のような外部」が実現されていたように感じます。
そして中心の部分は1、2階ともに、特に機能を与えられていない空間となっていますが、1階はキッチンやテラスとの境界が曖昧であるためにみんなが集うような場所となっていました。2階の中心部分は2階のフロアレベルからさらに70cm上がっているために、よりプライベートな雰囲気を持っていました。
このように、この家には曖昧な空間がいくつもありました。そして、このような曖昧な空間こそがこの家で一日を過ごす人々に多様な居場所を与えているのではないかと、私は感じました。さらに空間だけでなく、阿部先生が収集しておられる椅子や芸術作品、石などの自然物といったモノが随所にあることによって、居場所が居場所たりえる場所になっていると思います。
今回の会でも参加された皆さんがそのような場所にそれぞれの居場所を見つけてそれぞれの時間を過ごされている姿が見られました。また、食事会が始まると全員が1階の「中心」をまさに中心として楽しんでいらっしゃいました。阿部先生が用意してくださったイタリア産の生ハム原木を切らせていただいたり、ダッチオーブンを使った鶏の丸焼きをご馳走してくださったりと、阿部先生のホスピタリティにも感動しました。
このような素敵なおうちにお招きくださった阿部先生に感謝いたします。ありがとうございました。
レポート:中村 竜太(学生インターン)
早稲田大学大学院 創造理工学研究科 建築学専攻1年
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参加者のコメント
長年の夢だった阿部勤邸へ。本当にすばらしかったです。新所沢の駅からバスで10分ほど。40数年前にニュータウンとして造成された住宅地で碁盤の目のように整然と建ち並ぶ住宅群の中、一軒だけ、敷地をすみ切りしたようにナナメに建てられた家、その三角地に植えられた欅の大木が目立ちました。この角度、重要でした。
不朽の名作「中心のある家」は家族が巣立ち、奥様も逝かれ、今は阿部 ”少年” の秘密基地と化したワンダーランド。20年前ミセスで取材した時の雑誌も出してきてくださり、まだ奥様がご健在の頃の整然とした室内の写真と比べると今のお住まいとは別物。家は住む人と共に進化し変化するものですね。
阿部さんからの「来るなら1〜2時間じゃだめだよ。午後の光から夕暮れまでいてくれなくちゃ」の提案に2時半頃から8時過ぎまで6時間以上も!!そして阿部さんの伝説のペニンシュラ・キッチンにはハモンセラーノの足が一本。生ハムやチーズでワインを傾けていると、阿部さん、庭で炭をおこし、鶏一羽をダッチオーブンで丸焼きに。日がとっぷり暮れるまで、訪問者は気に入りの場所で談笑したり、蔵書をひろげたり、ハンモックでまどろんだり、阿部さんに質問したり。本当に贅沢な時間でした。