日時:2018年4月21日(土)10:00~14:00
見学場所:《松庵文庫》、《一欅庵》
参加者:16名
ナビゲーター:和田菜緒子
企画協力:藤岡裕子
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西荻窪の住宅街にて、築80年以上の住宅をギャラリー、ブックカフェ&レストランとしてリノベーションした《松庵文庫》、宮大工によって手がけられた洋間付き和風住宅の《一欅庵》などを巡るツアーでした。
《松庵文庫》は現在ギャラリーやレンタルスペース、ブックカフェ&レストランとして2013年7月にオープンしました。もともとは音楽家のご夫婦が住んでいらっしゃったようです。ご主人が亡くなり、奥様が家を手放そうとした際に、現オーナーの岡崎さんがこの家を受け継ぎました。建物の雰囲気や庭の樹齢約100年の立派なツツジなどを残したいという強い思いのもと、リノベーションもなるべく本来の姿を残しながらなされていました。しかしながら、例えばもともと風呂場であった部分が庭に面した明るく気持ちの良い飲食スペースになっているなど、住宅のそれぞれの空間の読み替えが面白い効果を生んでいると思いました。この住宅は様々な部分がそのままの形で残され過去の「生きられた時間」が流れるような空間でありつつも、カフェなどとして利用されることで現在を生きる場所になっているのだと感じました。ランチに頂いたお米御前もとても美味しかったです。
建築主であった辻太一の名前と玄関前の大きな欅から名づけられた《一欅庵》は、昭和8年に建てられた洋間付き和風住宅です。関東大震災を経験した太一が地震に強い家を建てたいという思いを持って、宮大工につくらせたこの住宅は最高級品の建材が用いられています。また、派手ではないが網代天井など随所に凝ったデザインが見られます。太一のお孫さんである現オーナーの辻さんによれば、和風建築と洋間を組み合わせているので、その連結部分が建てるときの難しい部分であったようです。この住宅も庭が立派であり、建設当時は森のような雰囲気で現在よりも敷地は広かったそうです。この住宅も築85年も建っていますが、非常に丁寧に使われておりそのままの姿を良い状態で残した建物でした。
「受け継ぐ」ということは、《一欅庵》のようにそのまま保存していく形もあれば、《松庵文庫》のように手を加えて新たな意味づけをしながら使い続けていく形もあります。どちらにも共通することは受け継ぐ人々の思いが強いことです。「生きられた家」には重厚な時間が流れており、建物が良く保存されるには建物自体の良し悪しだけでなく、その空間で質の良い生活が営まれてきたかどうかということも関係してくるのではないかと感じました。
レポート:中村 竜太(学生インターン)
早稲田大学 創造理工学部 建築学科4年