日時:2019年12月7日(土)9:50-14:30
見学場所:練馬区立美術館「没後10年 品川工展 組み合わせのフォルム」、山脇巌《三岸家住宅アトリエ》(1934)、林昌二《中野サンプラザ》(1973)
参加者:7名
ナビゲーター:和田菜穂子
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ツアーの最初に、練馬区立美術館の「没後10年 品川工展 組み合わせのフォルム」を見学しました。造形作家である品川工は「光」に着目したアーティスト、モホイ=ナジの著作などを通してバウハウスの影響を受けています。品川の作品は材料や技法の組み合わせが特徴的です。木版、物に直接インクをつけて刷る実物版、エンボス、樹脂版など様々な技法を駆使した版画や布絵、フォークなどの日用品を用いた彫刻といった作品を、時間をかけじっくり鑑賞しました。
続いて徒歩で《三岸家住宅アトリエ》(1934年、山脇巌)に移動しました。このアトリエは夫妻とも画家であった三岸好太郎・節子のために、バウハウスへの留学から帰国して間もない山脇巌が設計したものです。アトリエには三岸夫妻の意向が強く反映されていますが、好太郎は竣工を待たずして亡くなったため玄関付近や水回りの増築など、使用しやすいように建物を変更していったのは節子でした。建物の中で一番特徴的なのが吹抜けに設置されたらせん階段で、空間に動きや優美さをもたらしています。また、随所に使用されている堀商店製作の金物も見どころの一つです。扉ごとに形の異なる取手やねじれたような窓の格子などにディテールの美しさが感じられました。建物内ではコーヒーとお菓子をいただきながら、三岸夫妻のお孫さんにあたる山本さんからお話を伺いました。三岸夫妻と建物の関わりや建物を維持していくための取り組みについて教えていただいたり、アトリエに関する資料を見せていただいたりしました。この建物は文化財として公開するのではなく、“Not Monumental”なものとして、カフェとして地域住民に開放したり、撮影の貸しスタジオにしたりして、収入源を確保しながら使い続けています。
最後に《中野サンプラザ》(1973年、日建設計(林昌二)を見学しました。中野サンプラザは南側、北側それぞれ上部がセットバックされた外観が特徴的で、見る方向によって違った表情を楽しめる建物です。竣工から50年弱経ってもメンテナンスが行き届き、多くの利用者に愛されている様子が感じられました。しかし、駅の再開発に伴い取り壊しの計画が進んでいるとのことで、サンプラザ内での昼食時には、先に見学したアトリエとも比較しながら、建物の保存や公開について考えることができました。
レポート:山東真由子(学生インターン)
慶應義塾大学医学部3年