日時:2018年5月12日(土)13:15~16:15
見学場所:親建会工務所《徳田教会》(1953)
参加者:16名
ナビゲーター:倉方俊輔
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江古田の地に建つ戦後の木造建築である《徳田教会》を見学してきました。
現在、江古田の森公園である場所には、かつて結核患者のための国立療養所中野病院がありました。1930年、当時関口教会の主任司祭だったヨゼフ・フロジャック神父が、療養所を退去させられ身寄りのない患者たちのために、この地に「ベタニアの家」を建設しました。時代とともに敷地内には様々な施設が建てられ、敷地自体も広がっていきました。
《徳田教会》は1954年に仮聖堂として献堂されました。当初の計画では、その背後に広がる広場を正面に大聖堂が建設されるはずでしたが、実現されませんでした。計画通りにならなかったとはいえ、今では逆に敷地に入った正面には何もなく、視線が気持ちよく突き抜けるような面白い建物配置になっていると感じました。聖堂と司祭館が手前から奥に向かってひろがって行く「ハ」の字のように配置されていることも、その効果を強めているのだと思います。建物裏手から見ると、聖堂と司祭館の建物は左右対称に作られています。この様子が私に、少しローマのポポロ広場を想起させました。「ハ」の字の建物配置もミケランジェロのカンピドーリオ広場に似ているなとも、個人的には思いました。
木造である《徳田教会》の内部は白い内装でまとめられており、抽象的幾何学的な模様のステンドグラスから入り込む光の雰囲気が非常に上品でした。ツアー時間中はちょうど日が西に傾きだしており、したがって内部空間は内装通りの白を基調としたクールな印象から、だんだんとステンドグラスを透過した光が全体を包み込んでゆきカラフルになりました。立つ場所によって雰囲気が変わるような空間が生まれていて、西日の差し込むくらいの時間帯が、個人的には綺麗だと感じました。アーチとなっている梁がリズミカルな空間を作り出しています。この聖堂は全体的に、一般的なカトリック教会の装飾過多なイメージとは違い、落ち着いた雰囲気であると感じました。教会内部には、信者であった松谷謙司さんの聖書の物語をテーマとした彫刻作品が並んでいます。構図は静的な印象ですが、力強い彫り表現がキリストの生き方と重ね合わせられているように見えます。
徳田教会は江古田の結核患者たちを救いたいというフロジャック神父たちの強い思いが実現し、その後も江古田の過ごしやすい環境の中で、ゆったりとした時間が流れている場所であると感じました。
レポート:中村 竜太(学生インターン)
早稲田大学 創造理工学部 建築学科4年