日時:2017年1月21日(土)14:00~17:00
見学場所:吉村順三ギャラリー、目白が丘教会、目白の洋館(旧学習院昭和寮)
参加者:13名
ナビゲーター:和田菜穂子
【吉村順三ギャラリー】吉村順三設計(1976)
「自分の好きな居心地のよいスペースをつくりたい」と語っていた吉村。そのアトリエは本当に居心地のよいスペースばかりでした。居心地のよい応接室のソファは座るとふかふかで、庭の木々を眺めるのにちょうどよい高さです。居心地のよい所員の仕事場は、天井が高い吹き抜け空間で自然光が燦々と降り注ぎます。居心地のよい所員用のキッチン&ダイニングは、仕事はそっちのけで話が弾んでしまいそうな親密さを感じる明るい空間でした。まさに吉村の言葉そのものを実際に空間体験することができました。
元所員用のスペースは2階と3階にあります。普段は一般公開していないのですが、今回はそこで働く建築家の徳田さんにお願いして特別に案内していただきました。(写真はNGなのでありません。)
吉村さんはきっと所員も家族のように大切にしていたんでしょうね。私が一番居心地がよいと感じたのは、3階の所員用キッチン&ダイニングです。設計事務所につきものである徹夜での作業を考慮し、仕事場のデスクとは空間を完全に区切って、ソファで仮眠も出来る配慮がしてありました。
【目白が丘教会】遠藤新設計(1950)
設計者の遠藤はフランク・ロイド・ライトの弟子として知られています。帝国ホテル設計のアシスタントとなり、ライトが日本を去った後も完成まで一任され、池袋の自由学園明日館も実質は彼に任されていたとか。数多くいる弟子の中でも遠藤に対するライトの信頼は厚く、特別の存在だったようです。遠藤自身も師匠に対する尊敬の念は固く、ライトのスタイルをずっと継承し続けています。この教会もそうです。
内部は長いスパンのアーチが特徴で、屋根、梁、壁が一体化した構造で、無柱空間を可能としています。
バプテスト教会の洗礼のためのスペースはまるでお風呂場のように広く、祭壇の裏に隠されています。
【目白の洋館(旧学習院昭和寮)】宮内省内匠寮 権藤要吉/森泰治設計、(1928)*通常は非公開
本ツアーのハイライト!!
学習院は近衛公爵邸跡地にイギリスのカレッジの方針を取り、上級階級(華族)の男子学生のために高等科寄宿舎を建設。全個室の男子寮は「昭和寮」と名付けられました。敷地には、本館、4棟の寄宿舎、官舎、門衛所の合計7棟が建設され、現在は本館のみが使われており、某企業が所有する会員制のクラブハウスになっています。
見どころは外観で目を引く縦長の3連窓です。内部に入ると、3つ並んだ縦長の窓から差し込む自然光が階段室を明るく照らし、気品のある格調高い空間に仕上げています。
もうひとつの見どころは1階の待合室と大広間です。漆喰天井、板張りの菱形模様の柱など、アールデコ建築の特徴ともいえる幾何学的装飾が随所に施されています。大広間はかつて娯楽室と食堂に区切られていましたが、現在はひとつながりになっており、柱が耐震補強のため太くなっていたり、エアコンがついたり、と部分的に手が加えられていますが、それでも当時の装飾が状態のよいまま残っている希少な建物といえます。
建物の佇まい、内部空間の雰囲気などから、その建物に蓄積された歴史や空間の記憶をたどってみました。過去に思いを馳せ、想像力を働かせてみると、きっと建物の見方が変わってきたに違いありません。
レポート:和田菜穂子