日時:2018年3月14日(水)10:00~13:00
見学場所:《柳澤邸》、《日本民藝館》
参加者:11名
ナビゲーター:和田菜穂子
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春うららな一日、「民藝」をテーマにした二つの建物を巡りました。
まず始めは、京王線・代田橋駅近くの《柳澤邸》(1951)へ。住宅街の一角、広々とした庭の奥まったところにその小さな住宅はありました。
南側に開口部を見せる大きな切り妻屋根が特徴で、建築面積は15坪あまり。間取りは、玄関・居間・和室に納戸(旧台所)だけ。今風に言えば「1LDK?」の大変こじんまりした住宅です。しかしながら、そのたたずまいは、玄関の大谷石の土間から始まり、無垢材を使った味わいのある床や、素材感を生かした天井の民家風の梁など、どこをとっても絵になる仕上がりです。
戦後住宅といえば、ただ住めればよいというバラック風の建物が多かった時代に、施主と建築家の思いが詰まったこのような住宅が出来ていたことは驚きでした。設計を担当したのは、木工家具デザイナーでもあった伊東安兵衛。各地で民藝調の建物の設計にも携わった人物です。
洋間に暖炉を設けたり、窓上の欄間をガラス張りにするなど、当時の流行も取り入れているところに施主のこだわりが見えます。洋間と和室には段差があり、洋間のソファに座って和室を眺めた時に、そこに座った人と視線が合うというところに設計の妙を感じました。春の日差しに誘われて、庭に面したガラス戸を開け、大谷石のテラスに足を延ばして日向ぼっこをしてみましたが、とても気持ちのよい体験でした。
次に向かったのは駒場東大前の《日本民藝館》(1936)。こちらは大正から昭和にかけて、柳宗悦が濱田庄司らと民藝運動を興した中心地です。道路を挟んだ向かいには、現在《西館》として公開されている柳宗悦の旧自宅があります。
共に大谷石をふんだんに使った外壁が特徴です。民藝館で印象的だったのは、使い込まれたつややかな床や、素材感を生かした木製の階段手すりなど。展示品の数々も見事でしたが、展示室の開口部から取り入れる光の計算も印象的でした。
西館の見どころは、玄関部として宇都宮から移築されてきた古い長屋門です。なんと屋根材がすべて大谷石です。一方、内部は無垢材の床や洋間と和室の取り合わせなど、先ほど見てきた《柳澤邸》に共通する要素も多く、むしろこちらが本家だという思いがしました。当時の民藝運動の総本山から生まれた流れが一般住宅まで波及していたことが確認できた気がします。
今回は建築に携わっている参加者の方もおられて、いろいろ専門的な解説を聞けたのも収穫でした。
レポート:大山光彦(社会人ボランティア・スタッフ)