日時:2019年12月27日(金)10:30~16:00
見学場所:《千葉県立美術館》(大髙正人/1995)、《千葉県立図書館》(大髙正人/1965)、《千葉県文化会館》(大髙正人/1967)、《千葉大学医学部亥鼻記念講堂》(槇文彦/1963)
参加者:10名
ナビゲーター:和田菜穂子、磯達雄
ゲストナビゲーター:頴原澄子 (千葉大学准教授)
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2019年最後のツアーでは、千葉に在る建築家・大髙正人氏設計の建物を巡りました。
まず向かったのは傾斜屋根が特徴的な《千葉県立美術館》(1995)。学芸員の方の案内で普段は立ち入る事の出来ないバックヤードなども見学させて頂きました。
そして千葉都市モノレールに乗り、向かったのは《千葉県立図書館》。1965年竣工の建物です。この建物は大髙氏の大学の同期である構造建築家・木村俊彦氏と共同で設計されました。予め工場でコンクリートの天井グリッドを作り、それを現場で組み立てて柱を立てるというプレグリッドシステムによって造られていますが、現在の図書館は耐震基準に見合わない箇所がある為、建物の1/3しか利用されていません。図書館自体も数年後に移転する予定との事で、今後の建物の存続が気に掛かります。
お隣の《千葉県文化会館》(1967)では係の方のご案内で大ホールの内部以外を見学させて頂きました。《千葉県文化会館》は《千葉県立図書館》の2年後に建てられましたが、雰囲気は全く異なります。配置計画は広場と建物の関係性が考えられていて、車と人それぞれの出入口を設ける事でスムーズな動線を確保するなど、ヒューマンスケールの考えの元で計画されています。構造はHPシェル2枚による大屋根構造。中央ホールの壁は現在白いパネルで覆われていますが、竣工当時はコンクリート打ち放しだったそうです。中央ホールから大ホールへと繋がるホワイエを見学させて頂きましたが、正面の赤い壁と斫り壁・柱は、大髙が設計に携わった《東京文化会館》(前川國男/1961)を彷彿とさせます。その中にもアールを描いたソファなど大髙らしさが感じられる空間でした。
最後に、特別ツアーとして千葉大学医学部にある建築家槇文彦氏・初期の作品《亥鼻記念講堂》(1963)を、千葉大学の穎原先生にご案内頂きました。講堂は2014年にリニューアルされたそうです。まずはじめに、建物の造形は崖の形を延長するような鎮守の森を意識した物であるという事を教えて頂きました。講堂の玄関上部には彫刻家の流政之氏による作品が飾られています。講堂の前は竣工当初広場として使う事を想定していたそうです。その為に同じく流政之氏の手による彫刻が前方の壁に彫られていますが、現在前庭は駐車場として利用されている為、教えてもらわないと気付かない状態であるのが少し残念でした。内部に入ると以前は2つの柱の間に映写室があった事、機械の性能が上がった事によりホワイエとホールの間に壁を作り音響を良くした事、ホールを中心に左右に設けられた中小会議室や、竣工当時のまま使われ続けられている2階の天童木工製の椅子など、時代に応じて変化した建物の歴史を感じました。また舞台後方の壁にも前庭の彫刻と呼応するような、流政之氏の彫刻が彫られていました。
今回のツアーで巡った建物は千葉県立美術館を除き、全て1960年代に建てられた建物です。それにも関わらず建物の状態はそれぞれ異なり、人と建物の関係性を深く考えさせられた時間となりました。
レポート:阿久根 直子
(サポートスタッフ)