TOUR

品川区の魅力発見ツアー《アントニン・レーモンドの建築》

2016.11.26.
https://accesspoint.jp/reports/%e5%93%81%e5%b7%9d%e5%8c%ba%e3%81%ae%e9%ad%85%e5%8a%9b%e7%99%ba%e8%a6%8b%e3%83%84%e3%82%a2%e3%83%bc%e3%80%80%e3%82%a2%e3%83%b3%e3%83%88%e3%83%8b%e3%83%b3%e3%83%bb%e3%83%ac%e3%83%bc%e3%83%a2%e3%83%b3/

日時:2016年11月26日(土)9:30~13:00

見学場所:星薬科大学、聖アンセルモ教会

参加者:約100名

主催:品川区

ナビゲーター:磯達雄、若原一貴、和田菜穂子、柏木裕幸、永峰昌治

 

 

品川区主催のツアーに講師として参加させていただきました。区外からの参加者が多いことにびっくり!建築マニア、街歩きマニアの方が各地から集まり、なんと倍率は2倍だったとのこと。つまり200人の希望者に対し、100名に絞られたそうです。今回は戦前戦後のふたつのレーモンド建築を見てまわりました。

 

【星薬科大学】1924年竣工
日本を訪れ、帝国ホテルの建設に携わっていたレーモンドが、師のフランク・ロイド・ライトの許を離れて最初期に設計した建築作品。学校の創始者である星一の依頼を受けて、一日でまとめたとされる基本設計には、星が留学したコロンビア大学のロー・ホールが参考にされています。外観の見どころは正面周りの大谷石を用いた装飾。背後に回るとチェコ・キュビズムの影響がみられます。内部は正面から続くスロープが特徴で、壁画を鑑賞しながら斜路を巡る構成。講堂のドームは創業者の名前にちなんで八角形の星型。

 

【聖アンセルモ教会】1955年

通りに面した外観は抑えられた濃赤色でまとめられ、隣接するカトリック東京国際センター(旧幼稚園)と統一されています。内部に足を踏み入れると、コンクリート打ち放しの仕上げで、装飾をできるだけ排除した清貧な造りになっています。しかし正面の祭壇の荘厳さには息を飲み圧倒されるでしょう。円を重ねた幾何学的表現、黄金の巨大彫刻、吊るされた小さな木製の十字架、これらはアントニン・レーモンド自身によるデザインで、壁面には縦長のスリット状の開口部が角度をつけて設けられ、祭壇に向けて採光がとられています。壁面にある十字架のレリーフ、燭台は妻ノエミによるデザインです。上を見上げると天井がジグザグ折れ曲った、コンクリートの折板構造となっており、後に「群馬音楽センター」(1961年)でも柱のない空間を可能にしたレーモンドの挑戦的試みが行われています。

「建築はsimple, natural, economical, direct,そしてhonestでなければならない」というレーモンドの五原則を踏まえ、戦後レーモンド事務所に入所した増沢洵が担当しました。軽井沢の「聖ポール教会」(1935年)、港区芝にある「聖オルバン教会」(1956年)と比べてみると面白いでしょう。

 

静かな教会も好きですが、本来の教会はこのようにたくさんの人が集まる場所なんですよね。ちょうど午前中は結婚式に使われていたそうで、なんとなく空間に幸せなかけらが舞っているような、そんな気分になりました。折板構造の横長スリットからの西日がきれいです。

 

レポート:和田菜穂子