今回、デンマークモダンハウスを訪ねる旅に参加して、豊かな暮らしを体感することができました。多くの実際に住まれている(住まれていた)住宅を訪ねること素晴らしい自然の中にある住宅が多く人間はやはり緑(自然)の環境の中に生きているときに幸せを感じることができると思いました。どの家もモノはあるものの、片付けられていて、いつでも友人や客人を迎え入れる準備ができているようでした。暮らしそのものが「迎え入れる」ことを当たり前にしているのだと思います。デンマークの住宅で感動したこと、共感したことは多くありますが、今回は迎え入れる最初の扉である「玄関扉を開けて見える景色」について着目して、まとめていきたいと思います。どの家も玄関扉を開けた佇まいがしっかりとありました。それぞれの家族の暮らしや人柄も感じました。
1.Kingo House(arch. Jorn Utzon)
左の格子戸の向こうには庭の緑がきれいに見えています。右の扉奥はリビング。勾配天井の広がりと庭からのやさしい光が入ってきています。玄関ホールには貝殻や絵(ご主人がデザイン?)など思い出のものが飾られていて、ホールから横に延びる廊下にも絵や写真が飾らていました。コンパクトギャラリーのようです。
2. Pia’s House(arch. Moller)
ライトアップされたお花がまず目に留まります。深めの飾り棚(収納付)と奥にはミラーが備え付けてあり、出掛ける前や訪問客も身だしなみを整えられます。ミラーで奥行き感も出しています。この玄関ホールには、ゆったりしたソファが置いてあり、素敵なお店の待合室のような雰囲気です。玄関ホールを起点に様々な部屋にアクセスできる設計です。
3. Dorte’s House(arch. Ejnar Nielsen)
ふと見上げると印象的な照明が出迎えてくれます。明かりがついたら白い壁と天井にきれいな影ができそう。正面の開口の奥には庭の緑が見えて、抜けを感じることができます。赤いレンガの外観から入ってきて、家の中の白の空間のメリハリが効いています。
4. Utzon’s House(arch. Jorn Utzon)
大きな窓の向こうは緑一色。アートもさりげなく飾られていて、美術館のよう。床も天井もそれぞれ表情は違う素材を一面に使いながらも、黒の柱や梁でしっかり空間をしめていて上質な空間です。床は一段上がっていて、舞台のようにも感じます。
5. Jen’s House(arch. Boje &Bente)
湖に面したスキップフロアのある住宅です。表情のある階段の向こうにはやはり抜け感があり、緑が見えます。横の棚には、お子さんの作品が飾られていました。
6. Moller’s House(arch. Mogens Lassen)
こちらは厳密に書くと、玄関ドアから小部屋に入りそこから入った景色。窓と2Fからの光が明るく、曲線の壁とやわらかい天井の色、窓辺と正面には小物が置いてあり、照明はラジオハウスペンダント。玄関ドアを開けた正面にはアート(絵)が正面にありました。
7. Gunnlogsson’s House(arch. Halldor Gunnlogsson)
細い玄関アプローチには木格子が影をおとし、そこから細い玄関を入ると西側の大きな窓から庭の緑とやわらかい光、正面に書斎があり、その手前には窓にはあえて背を向けて絵画を眺めるソファが置いてあります。少し反対側を見ると低木越しに海が見えます。東西に抜けた大開口がありながら、人や車が通る道から低いレベルで建っていてプライバシーも考えられた住宅です。
8. Finn Juhl’s House(arch. Finn Juhl)
こちらも玄関から風除室のような小部屋を通ってドアを開けた景色になります。やはり庭の緑が明るく迎えてくれます。玄関ホールにはソファやFinn Juhlの椅子が置いてあり、室内に植栽も植えられています。その向こうにはお気に入りの食器等を飾る飾り棚があり、段差と共にゆるやかにダイニングと玄関ホールを区切っています。
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デンマークの冬は寒くて、暗くて、長いと聞きます。家の中で家族が心地よく暮らせるように、色や明かりや植物を取り入れていると感じます。デンマークが幸福度が高いのは、人としての時間をゆったりと過ごせていることと、そうした厳しい自然環境での生活で、日常の幸せへの感度がとても高いのではないかと感じました。待ち望んだ春に咲いた花の感動はひとしおなのだと思います。建築や住宅を学ぶ旅でしたが、同時に生き方を考える旅となりました。まさに、暮らすことは生きることを体感しました。
最後に、和田菜穂子先生でなければ、デンマークで実際に住んでいる住宅を見に行くというツアーはできないと思います。このような貴重な体験をさせて頂きましてありがとうございました!また、建築大好きな仲間との旅は、とても愉しく、宝物のような時間を過ごすことができました。ありがとうございました!
辻 直子