TOUR

レトロ建築トークツアー「築地・旧居留地の教会を旅する」

2016.12.18.
https://accesspoint.jp/reports/%e3%83%ac%e3%83%88%e3%83%ad%e5%bb%ba%e7%af%89%e3%83%88%e3%83%bc%e3%82%af%e3%83%84%e3%82%a2%e3%83%bc%e3%80%8c%e7%af%89%e5%9c%b0%e3%83%bb%e6%97%a7%e5%b1%85%e7%95%99%e5%9c%b0%e3%81%ae%e6%95%99%e4%bc%9a/

日時:2016年12月18日(日)13:00~16:00

見学場所:聖路加国際病院《聖ルカ礼拝堂》、カトリック築地教会、その他慶應義塾発祥の記念碑など

参加者:24名

ナビゲーター:倉方俊輔

 

まるでヨーロッパにでもあるようなゴシック様式の本格的な教会、それに日本で珍しいギリシア神殿型の教会が東京にあること、ご存知ですか?『東京レトロ建築さんぽ』(エクスナレッジ刊)の発刊を記念し、厳選した同書収録の建物を、著者・倉方俊輔が案内するツアーを行いました。日本の旧居留地・築地に現存するふたつの異なる教会建築を通じ、開国以降の明治以降の歴史や、欧米から導入された建築様式について学ぶ体験ツアーとなりました。

 

【聖路加国際病院《聖ルカ礼拝堂》】アントニン・レーモンド設計(1933年)

旧礼拝堂の内部に入ると、交差リブヴォールトによって構成された本格的なゴシック様式の美しさに思わずため息が出ます。ステンドグラスに描かれているのは、築地という土地柄を象徴した魚などで、図像が抽象化されています。残念なことに写真撮影は禁止ですが、一般の方も見学可能ですので、是非訪れて実際の空間を体験してみてください。1階の廊下にはアールデコ風の照明器具や、蚊やハエなどの昆虫のレリーフがあります。この旧病院棟は、設計途中でアントニン・レーモンドからJ.V.W.バーガミニに設計者が変更されました。今の建物はそれらを保存しながら再建されたものです。

 

【カトリック築地教会】石川音次郎、ジロジアス神父設計(1927年)
ギリシャ風のドリス式オーダーが特徴のカトリック築地教会。エンタシスというふくらみを持たせた柱は錯視を狙ったもので、ギリシャ神殿などで用いられている建築技法です。三角形のペディメントと呼ばれる部分に描かれれている漆喰装飾も大変美しく、でも実は内部に入ると、石造ではなく木造建築であることがわかります。装飾が少なく簡素な造りですが、古い歴史を感じる温かみのある教会です。

 

【慶應義塾発祥の記念碑】谷口吉郎設計(1958年)
慶應にゆかりのある谷口吉郎によってつくられた記念碑は、ストレートな造形表現で本をモチーフにしています。本には福沢諭吉の有名な言葉「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」の文字が書かれています。谷口吉郎は戦後に慶應義塾大学の校舎の再建を行いましたが、現存するのはなく、幼稚舎(1937年設計 港区広尾)の建物だけは今もなお大切に使い続けられています。

 

【その他、勝鬨橋など】
日本初の幻のホテル「築地ホテル館」(1868年)は、実は勝鬨橋のたもとにありました。設計者はブリジェンスと清水喜助。わずか4年後に焼失しましたが、遺された錦絵を見ると、日本の伝統のなまこ壁と小高い塔が目印で、海上からも目立つ建物であったことがわかります。清水喜助は後の清水建設の創設者にあたります。

 

倉方俊輔による建築トークツアーを通じ、「築地」に対するイメージが変わったのではないでしょうか?一般的には「築地」というと、築地市場がクローズアップされがちですが、実は外国人居留地であった歴史が今もなお街や建物の一部に残されていることがこのツアーを通じて理解できました。

レポート:和田菜穂子