日時:2017年4月15日(土)9:30~12:00/13:30~16:00
見学場所:ニュー新橋ビル、静岡新聞・静岡放送東京支社、中銀カプセルタワー
参加者:5名(午前)、5名(午後)
ナビゲーター:和田菜穂子
ツアーのテーマは「メタボリズム建築」ですが、裏テーマを「昭和のサラリーマン戦士の生活実態」としました。
まずは待ち合わせ場所の目の前にある「ニュー新橋ビル」(1971)へ。建物の外観ファサードは、用途別にデザインが異なっているので、構造がひとめで理解できます。商業店舗のテナント部は白い格子が目を惹く、今見ても斬新なデザインです。よく見るとルーバーがランダムに配置され、そこに凹凸のある横材がかけられています。「目を細めてみると波打っているようなデザインですね」と参加者が見方を発見。確かにそうですね。
上層階のガラスのカーテンウォールはオフィス部分になります。設計者は「松田平田設計」。トップの名前を冠にするユニット型建築集団のハシリです。しかしこのビルが竣工した1971年は「松田平田坂本設計事務所」という3人の名前がついていました。(その後、坂本さんの名前が消えたのはどうしてなのか不明ですが・・)
建物内部に入ると、1階から4階まではサラリーマン御用達のテナントが入っています。特に1階は紳士服、靴、ドラッグストア、金券ショップ、飲食店、パチンコ、純喫茶、なぜか占い。(人生に苦悩している現代のサラリーマンは、占いに足を運ぶのかもしれませんね。)建物内部に入っても路地が続いているような設計です。階段周りにある色タイルはいろんなバリエーションがあって必見です。
続いて、丹下健三設計の「静岡放送・静岡新聞東京本社ビル」(1967)へ。円柱のコラムに四角のボリュームが接続していく形態は「メタボリズム建築」の基本形といえます。この前年に竣工した「山梨文化会館」(1966)は、16本の円柱コラムに梁と床を渡していく応用形になっています。こちらは「メタボリズム建築」の概念に則り、後に増築されています。
最後にツアーの目玉である黒川紀章設計の「中銀カプセルタワービル」(1972)へ。「サラリーマンの隠れ家」というコンセプトで設計されました。カプセルの面積はユニットバスを含めてもわずか10㎡。丸窓が特徴で宇宙的、未来的なデザインになっています。終電を逃したサラリーマン戦士が休息する部屋、週末ひとりで過ごすセカンドハウス、そんなコンセプトだったようです。ワンルームマンションのハシリであり、カプセルホテルの原型になったものです。
「サラリーマンの聖地=新橋」は今も健在ですが、それらが竣工した時代から約半世紀が経過した現代、女性にとっても「隠れ家」が必要ですよね。ツアー参加者も女性が多いのが現状です。中銀カプセルは私も含めて、今や「女性の隠れ家」に変貌中!?
レポート:和田菜穂子