日時:2019年6月22日(土) 13:30~16:00
見学場所:≪国際文化会館≫(前川國男・坂倉準三・吉村順三/1955)、≪東洋英和女学院≫(W・M・ヴォーリズ/1933)
参加者:11名
ナビゲーター:倉方俊輔
主催:リビングデザインセンターOZONE
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リビングデザインセンターOZONEとの共同企画で定期的に開催されているセミナー「東京のモダニズム建築を学ぶ」の現地見学会も今回で第5回になりました。
6/6に行われたセミナーで取り上げられたのは、ル・コルビュジェの弟子にして数々の名建築を生み出した建築家・坂倉準三です。その見学会の場所として、今回は前川國男・坂倉準三・吉村順三の3人により設計された≪国際文化会館≫(1955)を訪れました。
国際文化会館の場所には元々岩崎小彌太の邸宅(設計:大江新太郎)が建っていたそうです。また、庭園は京都の造園家・小川治兵衛による近代日本庭園の傑作として知られています。
終戦後、国際交流の再活性化を熱望した松本重治の想いとロックフェラー財団の支援により実現した国際文化会館の建物は、既存の庭と土地の起伏に合わせた豊かな空間構成になっていて、日本らしいモダニズム建築の要素が其処此処に見て取れます。
一般にモダニズム建築の要素としてはなるべくワンルームである事。そしてエクステリアの延長線としてインテリアがある事が挙げられます。国際文化会館においては、「宿泊する人」・「ロビーで寛ぐ人」と「カフェで食事する人」がホールを共有していて、玄関ホール内壁の大谷石はガラス面を通してそのまま外壁(エクステリア)になっていました。また、レストランSAKURAの入り口がホールから地下の暗い空間へ降りていく様に見えて、実際は庭の池に面し、緑を取り込む空間になっている事も特筆すべき点です。
本館の建物全体からは、吉村順三が得意とする、書院造をモダニズムで表現した独特の品格が存分に感じ取れます。躯体は杉の型枠による打ち放しコンクリートですが、柱の角の所できっちりと型枠を合わせている繊細さは外国では見られない日本ならではの特徴です。
また、屋上庭園や建物を囲っている手すりは坂倉準三の手によるものです。坂倉準三はモダニズムの建築家でありながらもクールなだけでは無い、人の心を惹きつける建築を得意としています。国際文化会館の正面玄関を入ってすぐ目に入る手すりも、建物や庭への親密感を高める要素として大きな役割を果たしているのではないかと感じました。
本館の隣には1976年に前川國男が単独で設計した増築部が建っています。こちらの外壁は打込みタイル仕上げですが、ベランダに面した壁は打ち放しコンクリートになっており、本館との連続性が見受けられます。
国際文化会館を出た後は≪東洋英和女学院≫(W・M・ヴォーリズ/1933)の外観を見学して、アメリカ由来の様式であるスパニッシュ・ミッションスタイルの特徴を学びました。
この見学会の良さは、事前にセミナーで各建築家の特徴を学べる所にあります。今回の見学会では坂倉準三だけでなく、吉村順三と第4回で学んだ前川國男の事にも触れる事が出来、より建物の素晴らしさを体感できる時間となりました。
レポート:阿久根 直子(サポートスタッフ)