日時:2019年3月23日(土)13:00〜16:00
見学場所:前川國男《世田谷区立郷土資料館》(1964)、前川國男《世田谷区役所第二庁舎》(1969)、前川國男《世田谷区民会館》(1960)、アントニン・レーモンド《日本聖公会東京聖十字教会》(1961)
参加者:15名
ナビゲーター:倉方俊輔
主催:リビングデザインセンターOZONE
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リビングデザインセンターOZONEとの共同企画第4弾は、ツアーのメインである前川國男が設計した《世田谷区立郷土資料館》(1964)からスタートしました。元々は箱の形をした本館があり、そこに新館を増築して渡り廊下でつなげたことで、前川が好むような真ん中が通れて中庭につながる形となっています。本館の壁は工場で同じ形をしたコンクリートパネルを何個も生産してつなげた物です。建物の工場生産は現場作業を減らして品質を安定させるという利点があり一般化していく為、当時の最先端の技術を駆使した実験的な建物と言えます。新館は前川の晩年の作品で、一見すると前川らしくない色づかいの建物ですが、打ち込みタイルの手法や大胆な開口部・窓まわりの鉄骨使用など随所に前川らしさが光る建物でした。
次に向かったのは《世田谷区役所第二庁舎》(1969)です。この建物は建て替えが決まっており東京五輪の後に解体されてしまう為、来年の夏までしか見る事ができません。このタイミングで行けてよかったなと思いました。この建物では1950年代の前川のシンプルな作風とも1970年代のタイルを多用するスタイルとも違う、1960年代の前川スタイルを見ることができます。
向かい側には《世田谷区民会館》(1960)があります。この建物では折板構造を用いる事で、柱を無くしても強度を確保する事ができています。手間と人件費がかかるため、最近では見られなくなった60年代特有の工法です。この時代は軽快なモダニズムが主流でしたが、前川は重厚感のある建物にワンポイントだけ軽快に見える部分を作っています。この建物もまた、渡り廊下で《世田谷区役所第一庁舎》とつながっており、ピロティを抜けて広場に出るつくりとなっていました。
最後に訪れたのは《日本聖公会東京聖十字教会》(1961)です。《世田谷区民会館》と同時代にアントニン・レーモンドが設計し、集成材を使用して建てられたもので、ここにも建築の工業化に向かう時代の流れが見て取れます。
世田谷の街並みには下町の温かい雰囲気が残っているように感じました。前川國男とアントニン・レーモンドも、この街並みに溶け込めるような、大きすぎず主張が強すぎない暖かみのある建物を目指して設計したのだろうなと感じたツアーでした。
レポート:三上佳祐(学生インターン)
慶應義塾大学理工学部1年