日時:2020年1月11日(土) 9:00-16:00
見学場所:《報国寺》(1334)、《一条恵観山荘》(1646頃)、坂倉準三《旧・神奈川県立近代美術館鎌倉館、現・鎌倉文華館》(1951)、大高正人《神奈川県立近代美術館別館》(1984)、ノーマン・フォスター《現・鎌倉歴史文化交流館》(2004)
参加者:6名
ナビゲーター:和田菜穂子
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歴史ある鎌倉の街並みを歩きながら新旧の建築を巡ったツアー。最初に訪れたのは竹林の庭で有名な《報国寺》(1334)。本堂は南北朝時代の建立です。庭は外界と隔絶されたように静かな空間ですが風が抜けると葉擦れの音が聞こえます。苔の生えたお地蔵様や岩肌をくりぬいて造られた足利一族の墓(やぐら)など時間の流れに取り残されたような不思議な場所でした。この日は曇りでしたが、竹と竹の間から差し込んだ光が織り成すコントラストの美しい庭です。四季折々にまた訪れたいと感じたお寺でした。
報国寺を後にし、《一条恵観山荘》(1646頃)へ。桂離宮を設計した八条宮智仁親王の甥にあたる一条恵観によって江戸初期に設計された山荘の内部をご案内頂きました。林の中にいるような空間を表現するために様々な樹種を使用した柱、炉の暖を室全体に広げる仕掛けなど細部にまで趣向が凝らされていました。襖で隔てられた各部屋は天井や壁の障子の仕上げが異なり、奥に進むにつれて格式が上がります。暗い山荘内から眺める庭に晴れ間がのぞいて本日前半のハイライトになりました。
ランチは地元江ノ島で取れた海の幸を堪能し、鶴岡八幡宮にて新年の参拝をしました。境内の敷地にはル・コルビュジエの元での修行を積み、帰国した坂倉準三によって1951年に設計された旧神奈川県立近代美術館鎌倉館(現・鎌倉文華館)があり、外部から見学しました。師匠から大きく影響を受けたと思われる外観ながら、それと同時に日本の美学を取り入れることに意識を注いだ設計となっています。設計者の系譜や時期と照らし合わせて作品を考察することも建築の面白さのひとつだと再認識致しました。
リニューアルを終えた《神奈川県立近代美術館別館》(1984)の見学は学芸員の長門さんの解説から始まりました。建設時、史跡出土による規制から敷地内の地面を自由に利用できないという制約があるそうです。展示に必要な床面積を得るため、建物全体の計画を山側へ寄せ、二階の床をキャンティレバーで前面に張り出させるなど、規制を乗り越える様々な工夫が凝らされていました。
最後に訪れたのはノーマン・フォスター設計の《現・鎌倉歴史文化交流館》(2004)です。学芸員さんの案内によって見学した内部は、光ファイバーを組み込んだ人造大理石や、廃テレビ菅を利用したガラスブロックなど特殊な素材が使用され、とても元個人住宅とは思えない豪華なものとなっていました。モダンな外観や、元リビングの大きな開口部のある展示空間、英国人であるフォスターによって解釈された寝殿造り風の空間、などある種のちぐはぐさがこの建築の面白さかもしれません。敷地内にある丘へ登ると、鎌倉の町並みや海を望むことができます。入口前で集合写真を撮って本日のツアーを締めくくりました。
レポート:川島 純也
(サポートスタッフ)