日時:2018年1月6日(土)10:00〜12:30
見学場所:中銀カプセルタワービル・浜離宮恩賜庭園
参加者:3名
ナビゲーター:和田菜穂子
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2018年初のツアーは、メタボリズム運動で知られる黒川紀章の意外な側面を、お茶会を通して学ぶものでした。
まず歩道橋からビルの外観を眺め、その後カプセル内でメタボリズム運動の基本的なことを学びます。次に和田先生より黒川紀章氏と茶室との関わりについてレクチャーが行われました。その中で特に印象的だったのが、黒川氏は戦時中の多感な青年時代を疎開先の祖父宅の2畳の茶室で過ごしていたこと、そこでの経験が男性1人で暮らす最小限に必要なサイズを導き出した、という和田先生の仮説でした。黒川氏は自身が茶人であると当時に数寄屋造りにも造詣が深く、自宅マンションにも茶室「唯識庵」を造り、もてなしの場としていたそうです。「唯識庵」は小堀遠州の「松翠亭」の写しとのことで、つまりその設計手法は数寄屋建築の伝統を規範とした正統派のやり方で、村野藤吾のように本歌取りをしつつ自己流にアレンジして独自の世界観を切り開いたものとは異なります。
レクチャーの後、カジュアルなお茶会が行われましたが、そのお茶会を通してわずか10㎡しかないカプセル空間に居心地の良さも感じられるようになりました。
お茶会の後は徒歩数分の距離にある浜離宮恩賜庭園に向かいました。この日は幸いな事に天候に恵まれた上に風も強くなく、全員で気持ちよく散歩ができました。浜離宮恩賜庭園は周囲をビル群に囲まれている為、渡米経験がある男性から「まるでニューヨークにいるみたい」との言葉が出ました。園内には抹茶を楽しめる御茶屋もあります。
中銀カプセルタワービルはメタボリズム運動を象徴する建物として知られていますが、今回のツアーでは黒川氏の数寄屋造りに対する想いを知ることができました。ツアーには毎回様々な方が参加されています。今後、茶会を通してどのような気づきが生まれるか、期待が持てる時間となりました。
レポート:阿久根 直子(学生インターン)
桑沢デザイン研究所デザイン専攻科1年