日時:2020年9月27日(日)9:30〜12:00
見学場所:竹中工務店 日建設計《MIYASHITA PARK》(2020)、安藤忠雄《神宮通公園トイレ》(2020)、竹中工務店《渋谷 パルコ・ヒューリックビル》(2019)、日本設計《渋谷区役所、渋谷公会堂》(2019)、菊竹清訓《北谷稲荷神社》(1997)、丹下健三《国立代々木競技場》(1964)など
参加者:12名
ナビゲーター:和田菜穂子
和田先生がナビゲートする山手線ツアーの第7弾は、渋谷駅から原宿駅までの区間でした。今回は《MIYASHITA PARK》と《渋谷PARCO》の2つの大型商業施設をメインとして着目し、特に屋上の使い方などにフォーカスをあてながら、その周辺の建築などを巡っていきました。
集合したのは、宮下公園が新たに生まれ変わり2020年7月にオープンした《MIYASHITA PARK》です。《MIYASHITA PARK》は、元の公園の緑を損なうことなく若者が集う商業施設に昇華させた建物と、細長い敷地の端にそびえるホテルからなります。美竹通りに分断された敷地は、3、4階だけつながっており、元の地形も残しつつ、アーチをかけて植物を植えることで緑のトンネルをつくろうとしています。柵とベンチに同じ網を使っていたり、細かい部分も興味深かったです。
道路を挟んだ先には、《神宮通公園トイレ》があります。最近のアクセスポイントのツアーで注目している「THE TOKYO TOILET」のプロジェクトの一環であり、このトイレは安藤忠雄が手掛けたものです。風通しが良く、清潔感のあるデザインになっており、参加者の方も隅々まで観察なさっていました。
次に《渋谷PARCO》に向かいましたが、まだオープンしていなかったため、先にスペイン坂を見たのち、《渋谷区役所、渋谷公会堂》に向かいました。《渋谷区役所、渋谷公会堂》は同じプロジェクトで建てられたもので、モザイクタイルのような外観のデザインは共通していますが、区役所は緑系統、公会堂は赤系統というように、色の対比が用いられています。
《渋谷PARCO》に戻り、まずはエレベーターで屋上に向かいました。屋上からは、先ほど訪れた《MIYASHITA PARK》の細長い敷地とかかっているアーチがよく見えました。また隣接する《東京山手教会》も屋根の形状がよくわかりました。《渋谷PARCO》のランドスケープデザインは海外の事務所BENOYが手掛けており、地上から屋上まで建物の外部空間をぐるぐると登り降りできるスタイルはとても独創的でした。そのままスペイン坂へとつながっていくような周囲との調和も素晴らしかったです。
その後は、《東京山手教会》のファサードも少し見物してから、《北谷稲荷神社》に立ち寄りました。《北谷稲荷神社》は、菊竹清訓による設計で、オフィスビルと一体となった神社です。都会の中にありながら、神社の静謐さも失わず、かつ打ち放しコンクリートやガラスを上手く使ったモダンなデザインで、月のモチーフを随所にあしらった、魅力的な建物でした。
最後は《国立代々木競技場》です。丹下健三による日本でも屈指の名建築で、昨年ようやく改修工事を終え、利用が再開されました。先端には赤いワイヤーが見られますが、吊り構造を視覚的に強調するためでしょうか。設計者の丹下健三と構造設計の坪井研究室との協力関係の話なども聞け、訪れたことがある人にも新たな視点が得られるような、ツアーならではの楽しみ方ができました。
今回訪れた建物は、元の建物をリニューアルしたような建物が多く、宮下公園の緑を残しつつ若者が集まる場とした《MIYASHITA PARK》、スペイン坂などの要素を取り入れた《渋谷PARCO》など、“元々のランドスケープを継承する”ということの魅力を感じられたツアーでした。
レポート:三上佳祐(学生インターン)
慶應義塾大学理工学部2年