日時:2018年11月11日(日)9:30~12:30
見学場所:《東小路飲食店街》(戦後復興期)、 《ゼームス坂の看板建築群》(大正末~戦前期)、《東海道線旧大井町変電所》(大正初期)、《日本ペイント(株)「明治記念館」》(1909年)、《第一三共(株)品川研究センター810号館》(2016年)、《大崎ガーデンタワー》(2018年)、《NBF大崎ビル(旧ソニーシティ大崎)》(2011年)、《ゲートシティ大崎》(1999年)、《大崎ニューシティ》(1987年)
参加者:64名
ナビゲーター:磯達雄、倉方俊輔、若原一貴
主催:品川区教育委員会
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毎年秋に行われている品川区教育委員会主催の「しながわくの魅力発見ツアー」は、文化財の意味をちょっと広めに取ってまちの魅力スポットを回るツアーです。今年は一昨年に続いての建築ツアーで、東京建築アクセスポイントはガイド役を依頼され、約20名ごと3班に分かれて大井町から大崎界隈を歩きました。今回のテーマは「しながわ たてもの今昔」と題して、工場・商店・オフィスビルなど、品川にある明治から現代までの「はたらく建物」を巡りました。
最初は《東小路飲食店街》。戦後の闇市を凝縮したかのような一角は、夜にまた訪れてみたいスポットです。
そこを抜けると、ゼームス坂へ。坂のいわれを聞ききつつ、ところどころ現れる《看板建築》を見て歩きます。また、坂上、坂下など地形に応じた建築のことなど解説を聞くことで理解が深まります。
坂を下りJR東海道線の線路越しに見えるのは、ツタに絡まれた大きな赤レンガ建築《東海道線旧大井町変電所》。独特の存在感を放っています。次に向かったのは、《日本ペイント(株)「明治記念館」》。こじんまりした赤レンガの工場建築は、創業の地で会社の歴史を伝える記念館となっています。
目黒川沿いの一角に今回のハイライト、《第一三共(株)品川研究センター810号館》があります。名称からは想像がつきませんが、いわゆる企業の多目的ホールです。黒っぽいスチールの縁取りが施された大きなガラス張りの曲面と意図的に木目を残したコンクリートの外壁が美しい建物です。今回はこの建物の屋上庭園も見せていただきましたが、とても癒やされる空間でした。
次に向かったのは、竣工したばかりの《大崎ガーデンタワー》。遠望しながら、『現代建築はただの箱を作るのではなく、特徴あるデザインを施してスマートに見せたり、居住性を高めたりなど設計上の工夫がなされている』という話を聞くと、その点がなるほどよく分かります。これも専門家と共に廻るツアーならではの解説です。
大崎駅方向へさらに進み、緑に囲まれた《NBF大崎ビル》へ向かいます。このビルは外壁を覆うルーバーが特徴ですが、雨をため込み気化させて建物の温度を下げるというエコなシステムを採用しています。外壁デザインに機能を組み込んでいる点がユニークです。
最後はツアーの終点である《ゲートシティ大崎》と《大崎ニューシティ》へ。かたやバブル期の都市開発で生まれたゴージャスな建物。一方はそれ以前の機能優先のビル群。内部空間や素材の使われ方、デザインなど見比べても、その違いは一目瞭然です。先ほど見てきた最新のオフィスビル《大崎ガーデンタワー》ともまたひと味違う印象です。この30年間のオフィスビルの変遷がよく分かるのがこの大崎再開発地区です。『建物には時代の特徴が現れる』というまとめの解説を伺いながら、ツアー参加者たちも大いに納得していた様子でした。
レポート:大山光彦(ボランティア・スタッフ)