日時:2020年2月8日(土)13:00~16:30
見学場所:《トーキョーアーツアンドスペース本郷》(東京市、1928)、《旧元町小学校》(東京市、1927)、《元町公園》(東京市、1930)、《昭和第一高校本館》(木田保造、1931)、《桜蔭学園本館》(大林組、1931)、《本郷ハウス》(1970)、《瀬川邸》(1887)、《日本基督教団弓町本郷教会》(中村鎮、1925)、《MODERN/赤錆街路建築》、《ヱチソウビル》(1924)
参加者:10名
ナビゲーター:和田菜穂子
主催:トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)
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建築を通して本郷の歴史を知るツアーは、東京都歴史文化財団のトーキョーアーツアンドスペース主催で行われました。まずレクチャー会場の《トーキョーアーツアンドスペース本郷》(東京市、1928)ですが、もともとは関東大震災後の復興事業の一環として東京市によって建てられた職業紹介所だったそうです。和田先生によるレクチャーではこの建物の歴史や価値についての説明がありました。外観は水平線を強調したモダニズム建築ですが、内部には「人研ぎ」と呼ばれる手法で仕上げられた階段手摺など、職人による技術が見どころだそうです。また東京アクセスポイントのいままでの活動や、本ツアーでこれから見学する他の建物についても事前に説明がありました。今回のツアーでは主に関東大震災後の復興期に建てられた建築を巡りました。
徒歩数分の場所にある《旧元町小学校》(東京市、1927)と《元町公園》(東京市、1930)は震災後に建てられた「復興小学校」の典型で、中庭を囲む形の小学校と小公園が隣接し、避難所や延焼防止の役割を果たしています。西洋の公園を意識した石段や人工滝、町を見守る鷲の装飾など意匠にも工夫が凝らされていました。
その周辺にはファサードが特徴的な《昭和第一高校本館》(木田保造、1931)や、スパニッシュ様式の《桜蔭学園本館》(大林組、1931)など復興期に建てられた学校が集まっています。壱岐坂の反対側は震災を免れており、《本郷ハウス》(1970)のフランス積みの煉瓦壁や帝国大学工科大学初代学長・古市公威の自宅であった《瀬川邸》(1887)の日本家屋、文京区最大の《本郷弓町のクスの樹》など古くからの高級住宅街らしい街並みが残っていました。
《日本基督教団弓町本郷教会》(中村鎮、1925)では、牧師の先生からお話を伺い、内部を見学させていただきました。教会員であった中村鎮が考案した、L字の「鎮ブロック」で造った型枠にコンクリートを流し込む構造が特徴だそうです。外観は近代的な要素の中に、窓のアーチなどビザンチン様式が取り入れられています。内部はステンドグラスから光が差し、木造の講壇にはゴシック調の装飾が施され、落ち着いた祈りの空間でした。
本郷の商店街にはかつて多くの看板建築が残されていましたが、今はほとんどが建て替えられてしまいました。《MODERN/赤錆街路建築》と呼ばれる木造の店舗併用住宅がその姿を留めているにすぎません。最後に見学させていただいた《ヱチソウビル》(1924)は呉服屋の「越前屋」に由来した名前だとか。当時の梁などをむき出しに残したまま改装し、デザイン事務所やカフェ、イベントスペースなどに利用されています。大通りに面したアールデコ調の外観は昔も今も町のアイコンになっています。
建築を通して、関東大震災後の復興の歴史を感じられるツアーでした。
レポート:山東真由子(学生インターン)
慶應義塾大学医学部3年