日時:2017年11月30日(木)14:00~17:00
見学場所:日本赤十字本社ビル、天童木工東京支店
参加者:14名
ナビゲーター:和田菜穂子
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今年は黒川紀章の没後10周年に当たります。東京建築アクセスポイントでは定期的に中銀カプセルタワービルのにツアーを行なっていますが、今回はメタボリズム建築以外の側面に触れるツアーが開催されました。
【日本赤十字本社ビル】1977年黒川紀章設計
1912年に明治期に活躍した建築家・妻木頼黄の設計によって建てられた日本赤十字社旧館が老朽化し、取り壊しが決まった後、新ビルとして1977年に建設されました。特徴的なのは黒川紀章が「中間領域」と定義している、エントランスロビーです。内部と外部の曖昧な繋がりがうまく表現されています。
ツアーの最初にビルの裏側や外構を見学しました。細かい石が敷かれ低木が植えられていて、まるで日本の路地裏空間を思わせるような美しい仕上がりになっていました。黒川紀章が「路地裏空間」を意識している表れだそうです。和田先生によれば、黒川氏は最初ル・コルビュジエの建築を賞賛していましたが、実際に建物を訪ねたら地面と建物が接する所のディテールが詰められていない事を知り、残念に思ったそうです。異なるもの同士が接する部分のディテールにこだわること、例えばガラスとコンクリート、外部と内部、過去と未来、などがそうです。その交わる場を「中間領域」と捉え、曖昧でありながら、日本人が大事にしている概念だと黒川氏は考えたそうです。日本の縁側はその好例です。また、正面の庭には池があり、赤十字に関係する糸杉とプラタナスが植えられていました。
さて、メインエントランスの中に入ると正面に見えるのは先ほど見たビル裏側の美しい緑。内部にいながら外部にいる様な心地がしました。ドーム型のガラス屋根が開放感を演出しています。またビルの設計において、妻木頼黄設計の建物をどう新しいビルに取り込むかが課題の一つでもありました。エントランスホールの照明には過去の物が使用されており、訪れた人を暖かく迎え入れます。
職員の方の案内で向かった7階特別会議室が今回のツアーのメインとなります。普段は一般には公開していません。入口のモールとマントルピース、暖炉に過去の物が色を変えて使用されていました。黒川氏がデザインしたものと過去のものとが融合し、うまく調和した空間となっていました。このように、過去の歴史と新たな歴史が融合して歩み始めたその共存性に興味深い物がありました。
2階会議室の外壁には画家・東郷青児作
【天童木工東京支社ショールーム】1964年坂倉建築研究所設計
主に設計を担当したのは家具デザイナーとしても知られる長大作氏
旧い建物から歴史を引き継ぎ、
レポート:阿久根 直子(学生インターン)
桑沢デザイン研究所デザイン専攻科1年