TOUR & TALK

山田守建築を巡るツアー&トーク「東海大代々木校舎」と「旧山田守自邸」

2017.04.20.
https://accesspoint.jp/reports/%e5%b1%b1%e7%94%b0%e5%ae%88/

日時:2017年4月20日(木)15:00~18:00

見学場所:東海大学代々木校舎、東海大学付属望星高等学校、旧山田守自邸

参加者:14名

ナビゲーター:磯達雄

ゲストスピーカー:山田新治郎(写真家、山田守の孫)

企画:和田菜穂子

 

 

建築家山田守(1894-1966)の没後50周年を記念して開催された「山田守の住宅展」に絡めて、山田守建築を巡るツアーを企画しました。ツアーの目玉は山田守の孫で写真家の山田新治郎氏によるギャラリートークです。自邸の展覧会会場で家族の思い出を語ってもらいました。

 

その前に磯がナビゲーターとなり、「東海大学代々木校舎群」(1955~1962)と「東海大学付属望星高校」(1959)を巡るツアーをおこないました。代々木校舎は戦後にスタートした、山田守の一連の東海大学キャンパス建築の始まりとされています。中央に位置する「代々木校舎2号館」(1958)はたびたび登場するY字プランではなくX字プランになっていて、車寄せとしてつくられた特徴的な庇は「長沢浄水場」(1957)のマッシュルームコラムの発展型といえます。

 

「旧山田守自邸」は代々木校舎と同年の1959年に竣工しました。2階へ上がる螺旋階段は山田らしい独自のモダニズムの表出といえるでしょう。螺旋階段によって、2階のプライベート空間(住居部分)を通らずに、3階の事務所へ直接行くことができるよう設計されています。当時はここで「日本武道館」などの設計がおこなわれていました。3階は山田守の死後に増築され、現在は親族の方が暮らしています。

 

孫にあたる山田新治郎氏は祖父の死後生まれており、この家は「祖母の家」という認識だそうです。確かに山田守が晩年に設計したこの家は、妻に対する愛情が詰まっているように思えました。外観はモダニズム建築ですが、内部は意外にも純和風建築です。和服で過ごしていた妻の生活スタイルに合わせたのでしょう。キッチンの設計に関しても収納が多く、家事効率に配慮した合理的なデザインになっています。金沢の名家に生まれ、茶道をたしなんでいた妻のために、茶室も設けています。

 

母に連れられ、たびたびこの家を訪れた山田少年は、特に螺旋階段の隙間からスーパーカー消しゴムを落として一人遊びをしていた記憶が、思い出として深く刻まれているそうです。カーブを描くガラス窓から差し込む西日が、時の経過を知らせてくれたとか。成長して写真家の道を選んだ山田氏の建築写真には、少年時代の思い出の断片が幻影のようにオーバーラップして写し出されているのではないか、とふと思いました。

レポート:和田菜穂子