TOUR

谷中でアート&アーキテクチャー

2017.11.19
http://accesspoint.jp/reports/%e8%b0%b7%e4%b8%ad%e3%81%a7%e3%82%a2%e3%83%bc%e3%83%88%ef%bc%86%e3%82%a2%e3%83%bc%e3%82%ad%e3%83%86%e3%82%af%e3%83%81%e3%83%a3%e3%83%bc/

日時:2017年11月19日(日)

見学場所:朝倉彫塑館、HAGISO、岡倉天心記念公園、スカイ ザ バスハウス、旧谷邸、上野桜木あたり、平櫛田中邸、市田邸、プラネテス

参加者:9名

ナビゲーター:和田菜穂子

 

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今回行われたツアーでは、下町情緒あふれる谷中界隈を散策しながら彫刻家の住宅やリノベーション・改築が行われた旧い建物、TOKYO数奇フェス2017の関連イベントが行われている住宅などを巡りました。

 

まず訪れたのは彫刻家朝倉文夫氏のアトリエ兼住居として建てられた「朝倉彫塑館」。こちらは1935年に完成した建物ですが、当初建てられた小さなアトリエと住居から7年かけて徐々に増築され、今現在の形が出来上がったそうです。通りから見える建物外観は黒の塗装が施され一見近寄りがたそうに見えますが、一歩入ったその先から朝倉氏の拘り・感性が至る所に広がっていて、天井が高く柔らかな光に満ちたアトリエや水の揺らめきを室内に届ける中庭、門下生の園芸実習の場として利用された屋上庭園、素材への拘りが存分に感じられる壁・天井・階段の仕上げ等、外観からは想像も付かない豊かな空間が続いていました。

 

続いて向かった「HAGISO」は築60年の木造アパートを改修した文化複合施設です。1階カフェやギャラリー・レンタルスペースが緩やかに繋がり、談笑する人々のざわめきが小さな空間に満たされて温かい雰囲気を作り出していたのが印象的でした。「HAGISO」の道向かいの、日本美術院を創設した岡倉天心の旧居跡である「岡倉天心記念公園」で六角形モチーフを楽しんだあとは、「HAGISO」と同じく1938年に建てられた古い木造家屋3軒をリノベーションし複合施設として生まれ変わった「上野桜木あたり」を見学しました。先に見学した「HAGISO」と規模や施設の概要は少し異なりますが、同じく訪れた人々の柔らかいざわめきで満ちていて、旧い家屋であってもそこに人々がいるだけで建物も生き生きとする様子が心に残りました。

 

銭湯をリノベーションした現代アートギャラリー「スカイ ザ バスハウス」に立ち寄り外観を見学した後は、「全体と部分」と題した谷中アートプロジェクトの展示が行われている、「旧平櫛田中邸」(大正8年造)に行きました。平櫛田中氏は木彫の彫刻を専門とした彫刻家で東京藝術大学の教授も勤めていた人物です。その制作が行われたアトリエ部分は先の「朝倉彫塑館」と同様に天井が高く、斜めの窓から柔らかい光が降り注いでいました。また、アトリエと住居が少し角度を付けて敷地内に配置されている様子もアトリエ併用住宅として興味深い物がありました。

「旧平櫛田中邸」と同様に「全体と部分」の展示会場として公開されていた「旧谷邸」は、このコラボレーションにより初めて公開された住宅との事でした。階段手すりがアート作品になっていたり、部屋ごとに違うアートが展開されているなど古い家屋ならではの展示がされていて、アーティストの創造性を存分に楽しむ事ができました。

日が暮れ始めた時間に向かったのは「市田邸」。こちらは今回のツアー最古の住宅で明治40年造という事です。普段は非公開の住宅ですが、「全体と部分」の展示会場として特別公開されていました。中で行われていた展示は、畳を担いで避難していたという昔のエピソードを元に造られたインスタレーション等、ユニークなものがあり、その場にいた作家(芸大生)に説明してもらいました。建築としては1階縁側の窓の上に太い丸太が1本物で通っていたり、畳部屋の奥に強固な蔵が設けられている点などが特徴的でした。

 

ツアー最後に向かったのは、上野の森公園で行われていたアーティスト大巻伸嗣氏のインスタレーション「プラネテス」。上野の森公園にかつて存在していた寛永寺山門を期間限定で蘇らせたもので、そのライトアップされた様子には美しさと儚さが共存していました。

 

私達が普段目にする建物は天井も壁も仕上がった状態でその場に在り続けています。それが今回、期間限定で骨組みだけで存在しているインスタレーションを目にして、まるで現代から過去へタイムスリップしたような、でも自分が立っていて視界に入ってくるのは現在の上野公園、という多次元性を感じました。

 

東京建築アクセスポイントでは、日頃ナビゲーターの先生方が独自の言葉で様々な切り口から建築の事を教えて下さいます。今回はそこにアートとリノベーションが加わった事でまた新たな視点を体感する事が出来ました。

 

 

レポート:阿久根 直子(学生インターン)

桑沢デザイン研究所デザイン専攻科1年