TOUR

山梨文化会館と甲府の名建築ツアー

2017.10.18
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日時:2017年10月18日(水)10:40〜17:30

見学場所:ワイナリーサドヤ、山梨文化会館、愛宕山少年自然の家、山梨県立科学館

参加者:9名

ナビゲーター:磯達雄

企画:和田菜穂子

 

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いつもは東京近郊の建物を見学していますが、今回は山梨県甲府市に足を伸ばして、見学ツアーを行いました。

まずは駅近くにある大正6年創業の老舗会社ワイナリー・サドヤのワイン醸造場・貯蔵庫を見学。サドヤがこれまで築き上げてきた歴史や製造方法を職員の方の案内で学んでいきます。コルク栓の原料であるコルクの木の皮は厚みが出るまで30年かかり、剥いだ後も製品化するのに更に10年寝かせる事やワインの美味しさは皮の裏側にある事、樽から瓶に詰めて寝かせる事でワインが更に美味しくなる事など、これまで知らなかったワイン製造の裏側に参加者の方達も目を見張ります。そして途中の貯蔵室ではワインの試飲会も!ここでも白・赤ワインそれぞれの色味がワインの熟成度を示している事やグラスをくるくると廻す事で香りが引き出される事、その香りを言葉で表す難しさ、ワインの味わい方など様々な事を教えて頂きました。

 

ワイナリー・サドヤを後にして向かった先は舞鶴城公園。ここから当日のメイン見学先である、山梨文化会館の全体像を眺めます。この日は幸運な事に数日の悪天候が嘘のように晴れた気持ちのいい日で、舞鶴城の高台からは甲府市の、山々に囲まれた盆地形状を一望する事が出来ました。奥の方には富士山も見え、全員が穏やかな時間を過ごしました。また園内には、伊東忠太・大江新太郎が設計を手掛けた謝恩碑もあり、ひとしきり地形や建物の話題で盛り上がります。

 

舞鶴城公園を後にして、いよいよ丹下健三設計の山梨文化会館へ。2階にあるレストランで食事を取りながら語らいの一時を過ごした後、職員の方の案内で館内ツアーが始まりました。まずは地下で昨年12月に工事を終えたばかりの免震層を見学。ここには切り出されたコアの一部が置かれていたり、設置された免震構造を覗けるようになっていたりと、説明パネルと合わせて充実した見学スペースになっていました。

 

その後はコアの中に設けられた、使用目的に沿って赤・青・黄色に色分けされた螺旋階段を見学し、どの部分が改修されてどの部分が竣工当時のまま残っているのかを一つ一つ丁寧に案内して頂きました。特に印象的だったのは、4階の中空庭園に向かった時の事。設計当初、クライアントである山梨日日新聞グループの業務拡大を見込んで丹下氏が打ち出したのは“都市のように発展しうる建築”でしたが、実際増築が行われても遠目から見て違和感がないように仕上げる丁寧な作業からは企業の建物に対する愛情が見受けられ、施主・設計者・建物の三位一体性を感じる事が出来ました。それは続いて見学した社員食堂でも感じられます。1974年の増築で新設された食堂には社長自らがイタリアから取り寄せた特色あるタイルが敷かれ、椅子はイームズシェルチェアの生地を貼り替えながら今もずっと使っているそうです。建てられた当初だけではなくその後もずっと丁寧に使われ続けている建物のなんと美しい事か。

 

さて、山梨文化会館を後にして向かった先は仙田満設計の愛宕山少年自然の家。氏は現在“遊環構造”を掲げ、子どもの為の施設やスタジアム等数多くの建物を手掛けていますが、愛宕山少年自然の家はそのコンセプトを掲げる前の1973年29歳当時に手掛けた最初の少年自然の家であると著書『人が集まる建築』で述べられています。愛宕山少年自然の家で特徴的なのは、スロープで各階と屋上の展望台や小劇場が回遊できるようになっている事。それは屋外に限らず屋内の食堂等でも見られる構造で、その回遊性には若干のめまいを覚える程でした。その他にも子ども目線で計画された天井や洗面台の高さ等、見所が沢山ありました。山の斜面に沿って建てられた建物からは甲府市内を一望する事も出来、ここで過ごす子ども達は豊かな感受性を育む事が出来るのでしょう。残念だったのは雨漏りなど建物の老朽化も見受けられた点でした。山梨文化会館と比較すると手入れされていない様子には一同寂しさを隠せません。

 

愛宕山少年自然の家を見学した後は、徒歩で行ける山梨県立科学館へ。こちらも仙田満氏設計の建物です。科学館は外観を見学するのみに終わりましたが、自然の家同様山の上に建つ科学館の展望台からは甲府市内を一望でき、しばらく一同で美しい景色を堪能しました。

 

今回は東京を飛び出して甲府市での建物見学となりましたが、甲府市の緑あふれる環境も素晴らしく、お天気に恵まれた事もあって自然と建物の両方を楽しめた、素晴らしい一日となりました。

 

レポート:阿久根 直子(学生インターン)

桑沢デザイン研究所デザイン専攻科1年