TOUR

山ロ文象設計《新制作座文化センター》

2018.4.14
http://accesspoint.jp/reports/%e5%b1%b1%e3%83%ad%e6%96%87%e8%b1%a1%e8%a8%ad%e8%a8%88%e3%80%8a%e6%96%b0%e5%88%b6%e4%bd%9c%e5%ba%a7%e6%96%87%e5%8c%96%e3%82%bb%e3%83%b3%e3%82%bf%e3%83%bc%e3%80%8b/

日時:2018年4月14日(土)9:30〜13:00+α
見学場所:《新制作座文化センター》
参加者:10名
ナビゲーター:若原一貴、磯達雄
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朝9時半、高尾駅に集合して向かった今回の見学先は、建築家山口文象らが設立したRIA建築綜合研究所によって1963年に建てられた≪新制作座文化センター≫です。
劇団新制作座は1950年に設立された『民衆の為の演劇』をコンセプトとした劇団で、≪新制作座文化センター≫は劇団員達が集団生活を行い文化活動を行う拠点として建てられました。
今回のツアーでは、劇団代表の眞山蘭里さんが建物を案内して下さいました。眞山さんはお父様が俳優をされていた関係で幼少期に一家揃ってこの≪新制作座文化センター≫に越してきて集団生活を送っていたそうです。その為、その当時の劇団員達の暮らしぶり・劇団の様子を鮮明に記憶されていて、今回訪れた私達に沢山の事を教えて下さいました。

 

敷地は本部と宿泊棟、屋内・屋外劇場の3つで主に構成されています。
現在、劇団は星槎高校と共に敷地を運営している為本部は高校の事務所棟として利用されていました。

 

まず向かった野外劇場。こちらの屋外床は竣工当時赤と白のタイルで埋められていましたが、現在は芝生へと変わっています。その先の校門側にはプールが設置されていました。このプールは劇団員達が体を鍛える場所として使われていて、プールに本部の屋上から巨大なスライダーをかけて滑り降りるのを皆で楽しんでいたそうです。

野外劇場の舞台を象徴づける巨大な壁は竣工当時コンクリート打ち放しでしたが、大雨の時に背後の山から流れてくる水で床上浸水が頻繁に起こり、舞台の下にあった楽屋が被害を受ける為改装が行われたそうです。その時に壁も建て替えられて、現在は青いタイルが印象的な壁へと変わっていました。

竣工当時に雑誌に発表された写真は白黒で限られたアングルからである為、どういう風に劇団が舞台を使用していたのかまでは伺い知る事ができません。その点に関して眞山さんが、照明が壁を照らし出して綺麗だった様子。芝居が行われる時、舞台と壁の間にある階段を使って劇団員達が舞台裏を行き来していた様子などを鮮やかに教えて下さいました。

 

次は屋内劇場へ。ホワイエを通って劇場に入ると舞台上では次の上演に向けての準備が行われてました。音響設備や天井仕上げなど改装によって変わった部分もあるそうですが、劇場の座席半分は竣工当時の物をずっと使っていたり、画家の津高和一氏によって描かれた「心」の文字の緞帳を使い続けているなど、劇場を大事に使い続けている様子がとても伝わってきました。

 

反面、本部棟の後ろに建てられた宿泊棟は残念ながら現在は使われておらず、廃墟となっています。取り壊しの話もあったそうですが、劇団の皆様が反対されて20年前に自分達で改修を行ったとの事で、今でも想い出の積もったこの場所を何とか活用したいと考えているというお話でした。
建物としても、年月が経っている割にしっかりしているコンクリートやデザインとして昇華された、竣工当時木製だったサッシを雨から保護する為に深く出されたバルコニー・小窓を保護する庇など、惚れ惚れする所が沢山ありました。また、バルコニーを部屋に改装したり、二部屋を繋いで一室としたりと劇団の皆様がどう建物と共に暮らしていたのかを眞山さんのお陰で鮮明に知る事ができました。
他にも本部棟の洗面室で衣類を手洗いしていた事など書き切れない程沢山の事を語って下さり、一同大満足の時間となりました。

 

昼食を取った後は、都合のつく参加者の皆様と共に歩いて天皇家の武蔵陵墓地へ向かいました。
まだまだ咲いている桜やハナミズキ・ツツジなど季節の花々と高尾の自然を感じながらの道中はとても楽しく、陵墓の側にある建築家・保坂陽一郎氏作の派出所や伊勢神宮の参道を思わせる陵墓地内、墳墓の造形まで幅広く堪能する事ができました。

 

今回のツアーでは、何よりもそこで生活されていた眞山さんにお話を伺えた事が大きな収穫でした。住居という側面を兼ね持つ施設だからこそ見えてくる劇団員の方達の生き生きとした生活振り。それは書籍だけでは決して知りえなかった事で、建物が愛されて使われているのだと深く感じる事ができ、継承する事の大事さを考えさせられたツアーでした。

 

 

レポート:阿久根 直子(学生インターン)
桑沢デザイン研究所デザイン専攻科2年