TOUR

自由学園明日館とカトリック豊島教会

2017.12.17
http://accesspoint.jp/reports/%e3%83%95%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%82%af%e3%83%bb%e3%83%ad%e3%82%a4%e3%83%89%e3%83%bb%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%88%e3%81%ae%e8%87%aa%e7%94%b1%e5%ad%a6%e5%9c%92%e6%98%8e%e6%97%a5%e9%a4%a8%e3%81%a8%e3%82%a2/

日時:2017年12月17日(日)10:00~15:00
見学場所:「自由学園明日館」、「同講堂」、「カトリック豊島教会」
参加者:14名
ナビゲーター:和田菜穂子

 

********
師弟関係にあった二人の外国人建築家の建物を巡るツアーです。

 

帝国ホテル設計のため来日したフランク・ロイド・ライトは、設計を手伝うことになった日本人建築家・遠藤新の紹介で自由学園の創始者・羽仁夫妻から校舎の設計依頼を受けます。ライトはキリスト教を土台にした羽仁夫妻の教育理念に深く共感して設計を快諾したとのこと。そのライトの下、帝国ホテル建設のために米国から同行してきたのが弟子レーモンドでした。ライトが帝国ホテルの建設半ばで米国へ帰国した後も、自由学園はライトの薫陶を受けた遠藤新の手で徐々に完成していきます。

 

一方、レーモンドは日本に残り、新たな技法で数々の近代建築を生み出していきます。その下からは、吉村順三、前川國男などそうそうたるメンバーが巣立ちました。そして、レーモンド自身は第二次大戦の開戦前に米国へ帰国、戦後再来日し数多くの名作を残しています。豊島教会は戦後の作品に当たります。

 

自由学園は「主婦の友社」の創設者でもある羽仁吉一・もと子夫妻によって、1921年(大正10年)に設立されたキリスト教を土台とする女子学生のための教育機関で、その校舎が「明日館」です。軒の低いプレーリースタイルで、「明日館」の後ろにある高層ビル群が目立ちます。現在の緑の屋根やクリーム色の外壁からは想像もつきませんが、修復前は雨漏りがひどく室内でも傘をさしていたというエピソードがあったそうです。1997 年に国の重要文化財として指定、その後の修復作業により2001年に現在の姿になりました。オリジナルの姿(特に外壁や屋根の色、窓枠デザインなど)へ戻すのに参考となったのが、当時の生徒さんが描かれた絵だったそうです。床に関しては、竣工当時から下足利用が前提だったので傷みが激しく、大半は入れ替えざるを得なかったそうですが、一部には当時のものが再使用されています。教室の明るさを確保するために増設された開口部や、ライトが好んで使った大谷石、間柱の不自然な位置の理由など興味深い話が続きます。

 

二階の食堂と一階のホールが圧巻でした。大胆な幾何学デザインの窓枠から入り込む光が実に印象的。また、椅子やテーブルといったオリジナルの家具も素朴でありながら独特のテイストを感じさせるものばかり。ライトがデザインしたのか遠藤新の手になるものか判然としないところもあるようですが、独特のデザインセンスです。各地の美術館から展示品としての貸し出し依頼があるというのもうなずける話。女学校時代から使用している椅子は、予算不足を補うべく、遠藤新が市販の木材のサイズに合わせて合理的に考え抜いた結果だそうです。最後に訪問した教室は、わずか3か月という短い期間で設計・施工が行われ、開校式に合わせて足場が外されたという当時の記念写真を見せていただきました。

 

講堂は遠藤新の設計ですが、しっかりとライト・イズムを感じさせる空間です。今年に入り、改修工事を終えたばかりで、その間、様々な発見があったとのこと。壁の向こうから昭和の初めの水洗トイレが発見されたり、床材の裏から職人のいたずら書きが見つかったりしたそうです。

 

自由学園を後にし、昼食を参加者の皆さんと池袋駅付近のインド料理屋でとりました。その後、立教大学を通りすぎながら、豊島教会へと向かいました。豊島教会は屋根の形状が先ほど見たライトの明日館とよく似ていて、共通するデザインセンスを感じます。建築的特徴は、打ち放しコンクリート、折板構造の壁、光を取り入れる色ガラス、広い曲線を描く庇などですが、それらが一体のハーモニーとなって質素な内部を美しく見せています。一見、おもちゃっぽい印象を受けましたが、おそらく玄関上の壁面に規則正しく並んだ丸や四角の窓の印象のせいなのでしょう。その印象は教会の中に入るや一変します。その中はまるでカラフルな光の洪水。折板構造の横壁に穿たれた窓にはめ込まれた色ガラスによって、様々な色彩の光が左右から入り込んできます。正面の天蓋付き祭壇の上部からも光が降り注いでいます。東西軸に沿って建てられた教会は、太陽の光を取り入れて荘厳な朝を演出し、昼間は左右(南北)からの明かりで、折板構造の壁の窓からカラフルな光のシャワーが室内に降り注ぎます。光の変化とともに空間が刻々とその姿を変えていく印象で、ぜいたくな装飾品などほとんどない殺風景な空間に美しい変化を与えています。目黒の聖アンセルモ教会に似ているという声もありました。聖堂のベンチや、建具、一部のドアノブなどはレーモンド夫人のノエミの手によるもの。夫婦合作の教会です。

 

外へ出て裏手に回ると、後姿の教会はやはりおもちゃの建物のような印象。でも、内部見学をした後では、これがカラフルな光を祭壇内に送り込む装置だということが一目でわかるようになっています。やはり建物は外観だけ見ていては分からないものだとつくづく感じさせるツアーとなりました。今回は建築にかかわっている方の参加も多く、プロフェッショナルな観点からのご意見や感想をいただきました。2組のご夫婦、参加回数20回を超える方、など多様な方が参加されていました。ランチタイムや移動を通じ、参加者同士楽しく交流することができ、思い出深いツアーとなりました。

 

レポート:大山光彦(ボランティア・スタッフ)