TOUR

感嘆する異空間:村野藤吾設計の谷村美術館、渡辺洋治の善導寺

2025.05.05
https://accesspoint.jp/reports/itoigawa/
日時:2025年5月5日(月)10:40~14:10
参加者:6名
見学先:谷村美術館(1982) 、善導寺(1961) 、上越市立水族博物館うみがたり(2018) 、斜めの家(1976) 
ナビゲーター:和田菜穂子

新潟県糸魚川市にある二人の異才、村野藤吾と渡邊洋治の建築を巡るツアーでした!

まず最初に巨匠・村野藤吾の最晩年の名建築「谷村美術館」を訪ねました。まるで遺跡のようなコンクリートの塊が見えます。美術館に至る屋根付き通路は上越市高田市から来ると、なんだか雁木のように思えます。このコンクリートの塊の中に木彫芸術家・澤田政廣氏の仏像「金剛王菩薩」「光明佛身」「彌勒菩薩」等が展示されているのです。内部撮影は不可ですが、スリットやトップライトから差し込む自然光や仏像を照らした人工照明が神々しく、まるで別世界にいるような神聖な空間が広がっていました。私たちはたまたまタイミングよく、照明を消して自然光だけで空間を照らす時間帯に当たり、村野藤吾の意図した仕掛けを体験することができました。隣接した庭園「玉翠園」は「昭和の小堀遠州」と称えられた造園の権威・中根金作の監修で作庭されたものです。

 

次に異才の建築家・渡邉洋治設計の「善導寺」 (1961)へ。渡邉洋治といえば東京にある「軍艦マンション」が知られていますが、上越市出身なのです。「善導寺」は長いスロープが特徴で従来の寺院建築とは一線を画す形です。 行ってみると、ル・コルビュジエの孫弟子と言われる由縁がわかりました。スロープ、ピロティ、屋上庭園(いけなかったけど)、そのほかいろいろコルビュジエのデザイン要素が散りばめられています。とにかく行かないとわからないですね!

 

ここでツアーは終了。希望者のみツアーを継続することになりました。まずは向かったのは日本設計による「上越市立水族博物館うみがたり」へ。またもやタイミングよく、イルカショーが始まりました。背後に海が連続して見えるので、「インフィニティプール」となっています。 個人的にはペンギンが大好きなので、今まさに繁殖期で夫婦揃って巣の中で卵を温めているペンギンエリアに釘付けでした。

 

最終目的地点は「斜めの家」です。 今夜はこちらに宿泊です!渡邉洋治が設計した妹夫婦のための家で、かつては「銅の家」と呼ばれていました。藤森照信さんも高く評価しています。スロープが折り返しており、その形状が外観に現れているのです。たくさんある小窓が特徴的ですが、その位置は外部から見るとランダムに見えます。しかし内部ではちょうど良い位置に開けられています。通気のための開口部だったり、フィックスの覗き窓だったり、、、見方によっては吉阪隆正の「ヴィラ・クウクウ」に似てますね。このように師匠である吉阪の影響も見受けられました。「斜めの家」の運営をされている建築家の中野さんにこれまでの経緯などをお伺いしましたが、渡邊洋治の遊び心に驚嘆したのは雨戸に開けられた無数の小さな穴の秘密です。閉めるとまるで夜空の星のように見えます。さらに障子戸を閉めると、穴がピンホールカメラになり、なんと外部が映し出されるのです。私が個人的に気になったのは壁に浮き出た模様です。果たして建築家が意図したものなのでしょうか?私は「錆壁」と呼ばれる、茶室などの数寄屋建築に見られる手法なのではないかと推測しました。

 

住宅の良し悪しは滞在してこそ真価がわかるものです。前日に宿泊した「浮遊の家」もですが、宿泊することを強くお勧めします。充実したGWの2日間でした!!

 

レポート:和田菜穂子