GROUP TOUR

谷中ウォーキングツアー

2017.09.30.
https://accesspoint.jp/reports/%e8%b0%b7%e4%b8%ad%e3%82%a6%e3%82%a9%e3%83%bc%e3%82%ad%e3%83%b3%e3%82%b0%e3%83%84%e3%82%a2%e3%83%bc/

日時:2017年9月30日(土)9:30-12:30

見学場所:天王寺、朝倉彫塑館、谷中銀座、SCAI THE BATH HOUSE、東京国立博物館

参加者:15名

ナビゲーター:和田菜穂子

主催:Keio Welcome Net

 

Keio welcome Netより依頼をうけ、慶應義塾大学の留学生を対象に日暮里駅から上野の東京国立博物館まで歩きながら谷中界隈を巡るツアーを行いました。参加者は、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、中国、ルーマニアなど様々な国からの留学生で、全て英語で行われました。レポート記事はツアーのサポートをしてくれた、慶應義塾大学理工学部1年の大竹桃子さんです。

 

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まず訪れたのは天王寺。日暮里駅から徒歩2、3分ほどに位置するこの寺院は広大な谷中墓地の一角にあるということもあり、自然に囲まれ静けさを保った空間となっています。瓦葺の屋根や土間床、礎石などの伝統的な寺院建築の中にもどこか近代建築的な雰囲気を感じさせるこの空間は、風にたなびく木の葉や鮮やかな緑色と相まって、都心部であるにもかかわらずどこか別世界のような印象を受けました。留学生の方々も大仏さまや枯山水のお庭、御手水などに興味を示していました。

 

谷中墓地沿いのさくら通り、いちょう通りを抜け次に向かったのは朝倉彫塑館。昭和23年に文化勲章を受章した日本を代表する彫塑家朝倉文夫の自邸及びアトリエだった建物です。朝倉文夫亡き後に故人の意思により朝倉彫塑館として公開したものです。黒をベースにした外壁の住宅は、朝倉が東京美術学校を卒業した1907年、24歳の時に建てたもので、それから増改築が繰り返され今の姿となりました。朝倉自らの設計であるこの建物は材料から細部のデザインまで工夫が凝らされており、45分ほどの見学時間はあっという間に過ぎてしまいました。ちょうど朝倉没50周年記念ということで朝倉が愛した猫たちの彫刻の展示が行われていました。自邸部分は木材が多分に使われた落ち着いた雰囲気の純和風建築で、彼のこだわり抜いた材料によって構築される空間はシンプルながらも唯一無二な美しさを感じました。また、純和風な中にも、部屋毎に異なった組み方をされているフローリングの床や格子の角が丸くなっている障子などに彼のこだわりが見受けられ、どこかモダンな雰囲気を感じました。また、建物の中心には朝倉の考案に基づいて作られた回廊式の庭園があり、それぞれの部屋から庭園の違った側面を楽しむことができました。二階に上がるとまた雰囲気は変わり、白い漆喰の壁と大きく開いた開口部によってとても明るい雰囲気を感じます。また、庭園の全体図を見下ろすことができ、とても心地よい空間でした。二階のベランダ部分から屋上庭園と続く階段を上ると、開放的な空間が広がるとともに周辺の住宅街、またスカイツリーなどの景色が広がります。この庭園は植物の世話を通して土に親しみ、自然鑑賞の目を育むこと、そして触覚をはじめとする感覚を研ぎ澄ませることを目的としてかつて朝倉彫塑塾の園芸実習の場として利用されていたもので、日本の屋上緑化の先駆けとなるものです。

 

朝倉彫塑館を後にした次は、谷中銀座の商店街へと向かいます。古き良き日本の商店街の活気をそのままに残したこの商店街は、観光客の方に大人気で、ツアー当日も多くの人で賑わっていました。ちょうどお昼時ということもあり、留学生の方々もコロッケやドーナツ、お弁当などを購入したりお土産として急須を購入したりととても楽しんでいたようでした。この谷中座は猫の町として古くから知られており、商店街にも多くの猫のモチーフが見受けられました。

 

次に向かったのはSCAI THE BATH HOUSE。こちらはかつて実際に銭湯として使われていた場所を、最先端の日本のアーティストを世界に向けて発信するための現代美術ギャラリーとしたもので、見学時は中西夏之の個展が行われていました。昔ながらの趣のある銭湯といった感じの建物に足を踏み入れると、白い壁に囲まれた広い空間に配置された六枚の真鍮板と木製の土台によるインスタレーション作品が私たちを迎えます。見る場所によって異なる姿を呈する六枚の真鍮板は中西夏之の「〔この地表〕はまた水平膜面と呼べる程に揺れやすく破れやすい。私達はそこに位置している。」という言葉を表しているようでした。

 

東京芸術大学のキャンパスの横を通り、少し歩くと今回のツアーのゴール、上野の東京国立博物館へとたどり着きます。この東京国立博物館は、瓦葺きなどの日本伝統木造建築要素を取り入れながらも鉄筋コンクリートによって建てられた和洋折衷の本館、慶應義塾大学にゆかりのある谷口吉郎によって設計された東洋館、真っ白な外壁に青銅色のドームを擁したネオ・バロック様式の表慶館、ガラスと水面とシンプルな直線によって構築された近現代的な法隆寺宝物館、などの異なる建築様式の建物によって構築されており、展示だけでなくその建築自体も大いに楽しむことができます。今回は時間の都合上ツアーの一環として中を見学することはありませんでしたが、ツアー参加者の中にはツアー終了後その足で中を見学していく、という人もいました。

 

今回のツアーでは様々な素晴らし建築を見ることができただけでなく、谷中銀座の商店街などをはじめとした様々な場所で留学生の方々に日本の魅力を感じていただけたのではないかと思います。

 

 

レポート:大竹桃子(学生アシスタント)

慶應義塾大学理工学部一年