TALK EVENT

設立記念トークイベント【建築へのアクセス】

2017.03.18.
https://accesspoint.jp/reports/%e8%a8%ad%e7%ab%8b%e8%a8%98%e5%bf%b5%e3%83%88%e3%83%bc%e3%82%af%e3%82%a4%e3%83%99%e3%83%b3%e3%83%88%e3%80%90%e5%bb%ba%e7%af%89%e3%81%b8%e3%81%ae%e3%82%a2%e3%82%af%e3%82%bb%e3%82%b9%e3%80%91/

日時:2017年3月18日(土)17:00~20:30

場所:SHIBAURA HOUSE

登壇者:トム・ヘネガン、若原一貴、倉方俊輔、磯達雄、和田菜穂子

 

「一般社団法人 東京建築アクセスポイント」は昨年10月に正式に設立して以来、すでに20を超えるツアーを開催しています。今回のトークイベントでは、設立メンバー5人がそれぞれの言葉で熱い想いを伝えました。

 

和田は今までの活動を振り返りつつ、今後の予定として特にこども向けワークショップ、外国人向けツアー、海外ツアーなど新たな展開について話しました。また、大学や専門家と連携した共同研究の必要性、ボランティアスタッフや学生インターン制度の導入、国内外の建築ツアー関連組織との連携についてなど、組織全体の方向性について述べました。

 

トムは自身の経験から、海外からのゲスト、特に学生を案内しているときの問題点を挙げ、彼らの興味は建物のファサードであり、インターネットからの事前情報だけで知ったつもりになっている点を示唆しました。ル・コルビュジエがひとつの建築に対し3週間かけてじっくり対峙したように、私たちのツアーはリアルな建築と向き合うことで、その背景にある歴史的な要素等、深い理解を促すように心掛けています。

 

若原は当日午前中に行った広尾・麻布界隈を巡るツアー報告を行い、特に女性らしい感性による大江宏設計の讃岐会館に関しては、参加者(なんと全員女性)の心にも響いた様子を報告しました。ツアー途中、カフェで休憩を取り、参加者同志の親睦も図り、いつもに増して満足度の高いツアーだったようです。

 

倉方は男性的な建築の例として芦原義信を挙げ、3月末で閉館するソニーのバックヤードツアーの報告をしました。ツアー実施に関しては倉方個人がソニープロジェクトに関わっていることから、クライアントとの関係性で普段見れないバックヤードの見学が実現しました。大阪で関わっている「イケフェス」も普段みれない建物見学を売りにしているのは、クライアント(建物オーナー)との関係性で成立しています。

 

磯は外国の事例としてアメリカのマイアミビーチのアールデコ建築ツアーやシカゴ・アークテクチャー・ファウンデーションのツアー体験を報告しました。アメリカでは篤志家による寄付で運営が成り立っていますが、日本ではこのような組織を継続していくためには、会員制度はもちろんのこと、金銭面でのサポートが課題となっています。私たちの活動もここがネックです。

 

会場からの感想として、「街歩き体験での新たな発見がツアーの魅力」「美術ファンなど他の層へアプローチすることで建築ファンの裾野を広げていく」など、有益なご意見を頂きました。

 

“access point” —– 英和辞典で “access” と引くと、【他動詞】接続する、利用可能にする、【名詞】接近、入口、通路、(資料などの)入手・利用、(参加する)権利、とあります。建築への「アクセス」が拡がることを希望し、その手助けとして私たちは窓口や拠点=「ポイント」となり、活動を行ってまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

 

レポート:和田菜穂子

写真撮影:山田新治郎