TOUR

山陰のモダニズム建築ツアー 菊竹清訓設計の東光園など

2019.10.19〜21
https://accesspoint.jp/reports/%e5%b1%b1%e9%99%b0%e3%81%ae%e3%83%a2%e3%83%80%e3%83%8b%e3%82%ba%e3%83%a0%e5%bb%ba%e7%af%89%e3%83%84%e3%82%a2%e3%83%bc%e3%80%80%e8%8f%8a%e7%ab%b9%e6%b8%85%e8%a8%93%e8%a8%ad%e8%a8%88%e3%81%ae%e6%9d%b1/
日時:2019年10月19日(土)〜21日(月)
見学場所:《米子市公会堂》村野藤吾設計(1958)、《東光園》菊竹清訓設計(1964)、《田部美術館》菊竹清訓設計(1979)、《島根県立図書館》菊竹清訓設計(1968)、《島根県立武道館》菊竹清訓設計(1970)、《旧島根県立博物館》菊竹清訓設計(1959)、《島根県立美術館》菊竹清訓設計(1998)、《江津市庁舎》吉阪隆正設計(1959)、《島根県芸術文化センター グラントワ》内藤廣設計(2005)
参加者:11名
ナビゲーター:来間直樹(元菊竹設計事務所所員)、山本大輔(島根県庁職員)他
企画:山本大輔(島根県庁職員)、和田菜穂子

 

島根県庁職員の山本大輔氏の協力のもと、日本を代表する建築家菊竹清訓(1928-2011)の建築を中心に山陰地方を巡るツアーを実現することができました。3日間かけて、米子市、松江市、石見エリア(江津市、益田市)にあるモダニズム建築を巡りました。普段は見られない場所も特別に見学させていただき、参加者の皆さんは終始大興奮でした!

 

1日目は菊竹事務所OBの来間氏と米子市公民館で待ち合わせ。村野による改修(1980)とその後の大規模改修(2014)の変遷の違いを聞き、ホールの内部も案内していただきました。その後、車で移動し、菊竹清訓の代表作「東光園」(1964)へ。伝統的な木造建築を参照したダイナミックなコンクリート建築であり、アクロバットな実験的な構造になっています。最上階のHPシェルの中がどうなっているのかの疑問も解けました。天皇陛下がお泊まりになった特別室などを案内していただき、来間氏を囲んで懇親会。その後、露天風呂付きの大浴場で疲れを癒し、「天台」と呼ばれる本館に宿泊しました。

 

2日目は松江市に移動し、島根県庁職員の山本氏の案内で菊竹のモダニズム建築群をじっくり巡りました。まずは「田部美術館」(1979)からスタートし、その後「島根県立図書館」(1968)へ。ちなみに新設された自転車置場はガイドの山本氏の設計で、菊竹の図書館に敬意を払い45度に角度が振られています。今年8月に登録文化財となった「旧島根県立博物館」(1959)では普段公開していない3階に上がり、「自然採光、自然換気」の仕組みを取り入れた回転するルーバーを間近で見せてもらいました。しかしその機能はほとんど使われることはなかったそうです。当時の技術が菊竹の斬新なアイディアに追いついていなかったのでしょう。その後、美しい夕日が見られるロケーションで有名な「島根県立美術館」(1998)へ。なんとその日は幸運にも真っ赤に燃えた夕焼けを見ることが出来ました。私の人生でもっとも感動した、忘れられない夕焼けでした。日が暮れたところで、ライトアップイベント「結いとうろ」へ。市民の手作りの灯籠が置かれ、県庁舎自体も美しくライトアップされていました。

 

3日目は石見エリアに足を伸ばし、吉阪隆正設計の「江津市庁舎」(1959)へ。江津市都市計画課の山本氏に案内していただきました。師ル・コルビュジエを意識しつつも、地元色を取り入れた秀逸なモダニズム建築です。しかし数年後には新しい庁舎が建設され、現庁舎は今後の活用方針を模索しているそうです。その後、電車で益田に移動し「島根県芸術文化センター グラントワ」へ。グラントワとは石見美術館といわみ芸術劇場のふたつの施設の総称で、地元の石州瓦を壁までふんだんに用いた名建築です。水辺のある中庭はさながら外国のようでした。また数年後に訪れ、石州瓦の経年変化を見てみたいと思いました。ここでは学芸員の南目氏に美術館を、芸術劇場館長の木原氏に劇場を案内していただきました。

 

本当に濃密な3日間でした。コーディネートしてくれた島根県庁の山本氏には心より感謝いたします。ありがとうございました!

和田菜穂子